あさかぜ日記 入所から半年を経て
あさかぜ基金法律事務所 弁護士 小林洋介(福岡)
1 初めての法律相談
あさかぜ基金法律事務所では、養成の一環として、法テラスの了解を得て毎週水曜日に1時間の相談枠を確保していて、所員が交替で担当しています。私も、3月から法律相談を担当しはじめました。相談にあたっては、事前に法テラスに電話をし、相談内容の概要を聞いたうえで、下調べをして臨むようにしています。
初めての相談者は、行政への不満を訴えるご高齢の女性でした。まずは、相談者に水を向けてみましたが、話の内容がなかなか要領を得ません。相談者が行政に不満を持っていることは伝わるのですが、なぜそうなったか、行政とどういうやりとりをしたかなど、前後の経緯が相談者の話からはうかがい知ることができません。こちらから、質問を投げかけてもかみ合わない答えが返ってきます。少々弱りながらも、事実関係を聞き出そうといろいろ質問をしていたのですが、そうこうしているうちに、あっという間に30分が経過し、係の人から「時間です」コールがかかりました。思っていたより難しい、というのが最初の法律相談の感想です。とりわけ、30分のうちに法的助言ができるだけの情報を、要領よく聞き取ることの難しさを実感しました。
その後は、法テラスをはじめとした外部相談を重ねるうちに、少しずつ、段取りや聴き取りの要領もつかめてきた気がします。弁護士への相談一つで解決する問題も多いことを考えると、赴任先では、まず弁護士を身近な存在として感じてもらうことが重要だと思います。ちょっと弁護士に聞きに行ってみるかと気軽に思ってもらえるように、相談のスキルをさらに磨いていくつもりで頑張っています。
2 初めての事務所会議
あさかぜ基金法律事務所は、九弁連の運営委員会と福岡県弁護士会の管理委員会のもとに運営されています。そのため、月に1回会議が開かれ、事務所のキャッシュフローの確認などが行われます。キャッシュフローが一覧表で示され、どの弁護士がどれだけ売り上げ、経費がどれだけ支出されたかが一目でわかるようになっています。
初めての会議では、キャッシュフローの見方もよくわからず、議論を聞きながら議事録をとるのに精いっぱいでしたが、半年が過ぎ、ようやくキャッシュフローの見方や会議での議論の内容がわかるようになってきました。とはいえ、新米弁護士が独自の人脈や信用で売り上げを伸ばしていくことは容易でなく、目標の売り上げを確保していくことの難しさを日々、実感しているところです。もっとも、若手弁護士の養成を目的とするあさかぜでは、いろいろな支援体制が用意されていますので、幸いなことに、 売上にあくせくする必要はありませんが、赴任先では事務所の経営を担っていかなければなりません。
公設事務所という性格を考えれば、利益のみを追求するわけにはいきませんが、安定的に売上を確保していくことも不可欠です。理念と現実との折り合いをどうつけていくべきか、入所からわずか6か月で、経営の難しさに触れることができるのも、あさかぜならではの醍醐味だと受けとめています。
3 あさかぜ事務所に入って
あさかぜは、OJTを通じて司法過疎地域へ赴任する弁護士を養成する事務所なので、入所直後から、いろいろな事件、業務を経験することができます。入所前に事務所の先輩弁護士から、あさかぜは同期と比べ早い段階から多くの経験ができる事務所であると聞かされていましたが、本当にこの半年間という短い間にも、様々な経験をすることができました。分からないことがたくさんある中で事件処理を進めていく緊張感はありますが、大きなやりがいを感じることのできる職場であることに満足しつつ、半年間を過ごしてきました。
赴任までの2年間、一つでも多くの経験を積めるように、これからも日々の業務に邁進していきたいと思います。