あさかぜ日記
弁護士 小林洋介(福岡)
自己紹介
このたび、あさかぜ基金法律事務所へ入所しました、所員弁護士の小林洋介です。私は、長崎県佐世保市で生まれ、高校までを過ごしました。長崎は、大小様々な島があるとともに、大村湾で東西が分断される地理的特徴があり、くわえて、北は平戸、南は島原半島が突き出る形となっていて、県内各所の交通アクセスが非常に不便な県でもあります。
長崎県には、長崎市と佐世保市が中核市としてありますが、私が住んでいた当時、佐世保には中心市街地にわずかに弁護士がいる程度で、法律家は縁遠い存在でした。
我が家は母子家庭で、母子3人で古アパートに住んでいましたが、ある日、退去要請通知が送られてきました。アパートを壊すから出て行ってくれというものでしたが、母の収入だけで家計を支える家庭にとって、新居を探し、転居することは、経済的にも時間的にも容易なことではありません。しかし、無知とは酷なもので、私たち一家が借地借家法の正当事由や立退料など知るはずがありません。むしろ、貸主から出て行けといわれれば出て行かなければならないのが当然という認識でした。母は、仕事をしながらの転居先探しや引越の準備で、精神的にも経済的にも大きな負担がかかっていたようで、とうとう体調を崩してしまいました。
この経験から、私は、弁護士が身近にいることの重要性を身をもって感じるようになりました。司法の助力を必要としながら弁護士にアクセスできずに悔しい思いをしている人々の力になりたいという思いから、司法過疎地域への赴任を考えるようになりました。就職活動は法テラスと公設事務所にしぼり、最終的には自分が生まれ育った九州の地に貢献したいとの思いから、あさかぜ基金法律事務所への入所を決めました。
あさかぜ基金法律事務所の紹介
あさかぜ基金法律事務所は、司法過疎地域へ派遣する弁護士を養成するために設立された都市型公設事務所です。所員弁護士は、2~3年の養成期間を経たあと、九弁連管内の司法過疎地域へ赴任します。2017年1月には、中田弁護士が壱岐ひまわり基金法律事務所へ、河野弁護士が島原中央ひまわり基金法律事務所へ赴任したのに加え、2018年3月には若林弁護士が対馬ひまわり基金法律事務所へ赴任しました。当事務所は2008年の設立以来、九州各地の司法過疎地域へ弁護士を派遣していますが、派遣弁護士の定着により公設事務所としての役目を終える事務所も増えてきているなど、司法過疎の解消に着実に成果をあげています。
当事務所では、債務整理、家事事件、国選弁護事件を多く扱っていますが、法テラスの利用が多いのも特徴です。生活保護受給者をはじめ、経済的に厳しい状況にある方々への司法サービスの提供という面でも当事務所が果たす役割は小さくありません。
入所後の抱負
12月の中頃に入所し、これまで3ヶ月半がたちました。初めての法テラス相談では、うまく事実を聞き出せず相談時間を超過するなど、日々課題に直面しています。反面、日々の反省を踏まえて知識を身につけたり、依頼者対応について試行錯誤を重ねたりする中で、自分の小さな成長を感じられることも多くあります。先日、あるベテラン弁護士とお話した際に、「弁護士は何十年やっても日々勉強だ」とういう言葉をいただきました。この言葉に、弁護士は、常に学びと経験を積み上げていくことが必要な仕事 だということをあらためて感じました。新米の私は、当然、失敗をすることも、恥をかくこともたくさんあると思います。しかし、その先にある成長を楽しみに、怯むことなく、弛むことなく一日、一日を積み上げていきたいと考えています。
また、あさかぜ基金法律事務所は、九弁連や福岡県弁護士会会員の支援をはじめ、あさかぜ出身弁護士のこれまでの尽力により支えられている事務所です。これまで受け継がれてきたバトンをしっかりと受け取り、引き継いでいけるよう努めていきますので、引き続きのご指導ご鞭撻をよろしくお願いします。