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再生可能エネルギーの積極的な導入の推進を求める宣言

わが国はこれまでエネルギー政策において、化石燃料と原子力エネルギーに依存した社会を構築してきた。しかし、原子力発電所は、半永久的に放射線を放出する核廃棄物を膨大に排出し続ける施設であり、ひとたび事故が起きるとその被害の範囲・程度・期間は極めて大きい。他方で、化石燃料は、埋蔵量に限りがあるため永続的に使用が出来るものではない上、その使用に伴う二酸化炭素は地球温暖化の主要な要因となっている。このように、原子力や化石燃料に依存し続けることは、現代世代のエネルギー需要の充足のために将来世代へ解決困難な課題を押しつけることとなる。

このような旧来のエネルギー政策から、できる限り早急に「持続可能な社会」の構築を目指すエネルギー政策への転換が求められている。半永久的に持続可能性を持った社会、すなわち、将来世代の利益や要求を充足する能力を損なわない範囲内で、現代世代が資源・環境を利用し、要求を満たしていく社会の構築が必要とされているのである。そのためには、これまでのエネルギー政策を転換し、再生可能エネルギーの大幅な採用及び消費エネルギーの削減を進めるべきである。

そして、わが国には、太陽光、風力、地熱、バイオマス等の豊富な自然資源が存在する。このため、わが国の高い技術水準からすれば、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー政策へと転換することは技術的に可能である。他方で、再生可能エネルギーの導入による安定的雇用の創出や、中長期的に化石燃料調達費用の高騰が予想されることを鑑みれば、かかる政策転換は経済的にも可能である。しかし、現在、わが国の総発電電力量のうち、これらの自然資源を利用した再生可能エネルギーによる発電電力量の占める割合は、僅か3.79%(2011年度)程度に止まっている。

そこで、当連合会は、持続可能な社会の構築を目指し、再生可能エネルギーの積極的な導入の推進を求め、以下の宣言をする。

1 国は、再生可能エネルギーの積極的な導入を促進するために以下の施策を行うべきである。

(1)再生可能エネルギーによる発電事業者の新規参入及び事業の拡大をより容易とするための施策。

(2)発電事業の公正・公平な取引市場の早期実現に向けた施策。

(3)再生可能エネルギーへの転換に関する社会的合意(社会の共通認識)の形成のための施策。

2 当連合会は、所属する弁護士会とともに、消費エネルギーの削減及び再生可能エネルギー採用の推進に向けて、以下の取り組みを行うよう努力する。

(1)紙や電気、ガスなどの使用量や廃棄物の量を削減することでエネルギー消費量を削減すること。

(2)再生可能エネルギーによって発電された電力を購入することや、再生可能エネルギーを利用できる設備を導入することなど、可能な限り再生可能エネルギーを利用すること。

(3)上記の取り組みを充実させるために環境マネジメントシステムを導入する等の消費エネルギー削減及び再生可能エネルギー採用のための組織体制の構築をすること。

2013年10月25日

九州弁護士会連合会

提案理由

第1 再生可能エネルギーの大幅な導入の必要性

1 はじめに

九州弁護士会連合会(以下、「当連合会」という)は、エネルギー政策につき、消費エネルギーの抑制を図るとともに、再生可能エネルギーを中心として国内のエネルギー需要を賄うことを目指すべきであると考える。ここで再生可能エネルギーとは、太陽光、太陽熱、水力、風力、地熱、バイオマスなど自然界の作用によって利用する以上の速度で供給または補充されるエネルギー全般を言う。ただし、環境に大きな影響を与えるダム式水力は除外する。

わが国には豊富な自然資源があり、これを有効に利用することで、原子力発電所(以下「原発」という)に頼らずともエネルギー需要を賄うことが十分に可能である。しかし、現在わが国のエネルギー需要のうち、再生可能エネルギーが利用されているのは僅かに約4%に止まり、必ずしも導入量が大きく増大しているわけではない。これはこれまでわが国が原子力及び化石燃料に依存し、再生可能エネルギーの利用促進のための法制度の整備を怠ってきた結果である。

今後、原子力及び化石燃料に依存するべきではなく、早急にこれらのエネルギーへの依存から脱却し、再生可能エネルギーを中心とする政策へ転換することが必要である。

2 原子力エネルギーの問題点

2011年3月11日、福島第一原子力発電所事故が発生した。この事故により、大気中に大量の放射性物質が放出され、深刻な土壌汚染を引き起こした。その結果、福島県内の避難者だけでも自主避難者数を含めて約150,837人(平成23年9月時点、文部科学省原子力損害賠償紛争審査会資料)に避難生活を余儀なくさせた。

そして、拡散した放射性物質から放出される放射線は、人体のDNAを損傷させ、長期的には被ばくした放射線量に応じてがん・心臓疾患・脳卒中・消化器疾患・呼吸器疾患などの疾患発症率を増加させると言われている。さらに、周辺地域及び海域に放射性物質が広まったことで、周辺地域においては農業・漁業を行えなくなっている。

他方で、事故の有無を問わず、原発の稼働を継続すること自体に、解決困難な問題点が指摘されている。たとえば、原発を稼働させることにより使用済み核燃料を中心とした大量の放射性廃棄物が継続的に排出される。かかる放射性廃棄物は、数万年単位もの長期間にわたって放射線を出し続ける。このような危険性が高く長期間の管理が必要となる放射性廃棄物につき安全な処分方法は確立していない。

したがって、今後のエネルギー政策については、原子力エネルギーに依存するべきでない。

3 化石燃料の問題点

現在、世界のエネルギー需要を主として支えているのは、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料である。これらは有限の資源であり、現在の消費量を継続していくといずれ枯渇する。これまで発展途上国とされてきた国々の大幅なエネルギー消費量の増加により、予想される化石燃料の可採年数の見積もりは大きく下方修正されている。近時シェールオイルやシェールガスなど非在来型化石燃料資源が開発されてきているが、資源密度・採掘コスト・環境負荷等の点から、将来にわたる安定的資源たりえない。また、化石燃料は全般的に、今後各資源につき生産ピークの到来が予想され、大幅な価格高騰も避けられない。

さらに、産業革命後、人類が化石燃料を燃焼させてきた結果、大量の二酸化炭素が排出された。この人為的に排出された二酸化炭素は、温室効果ガスとして作用し、地球温暖化の主因となっている。今後、地球温暖化がさらに進行すれば、農作物生産量の減少、生活用水の不足にとどまらず、海水面の上昇による臨海部の土地の減少、動植物の種構成の変化、熱中症の増加や伝染病の地理的範囲拡大等の健康影響など、多くの回復不可能な被害が生じることが予想される。また、この地球温暖化は、進行すればするほど温室効果ガスの大気中濃度の上昇率増加が見込まれるため、このまま地球温暖化が進行した場合には、回復困難な状況になると予想される。

したがって、今後のエネルギー政策は化石燃料への依存からの脱却、転換を図るものでなければならない。

4 消費エネルギーの削減と再生可能エネルギーの大幅な導入の必要性

以上のように、わが国は、原子力及び化石燃料に依存したエネルギー政策からの転換を迫られている。将来の世代をみすえた、長期的な「持続可能な社会」の構築を目指す立場を取るならば、今後のエネルギー政策は、再生可能エネルギーの大幅な導入と、消費エネルギーの削減とを両輪とするべきである。

再生可能エネルギーは、自然界の作用によって持続的に供給される性質のものであるから、設備さえ維持されれば半永久的に利用が可能である。数百年~数千年の長期的単位で人類が持続的に利用可能なエネルギーは、かかる再生可能エネルギーしかない。

そして、再生可能エネルギーには、大きなポテンシャル(潜在的利用可能性)があるが、現状では、それのみで直ちに現在のエネルギー需要を満たすことは不可能である。再生可能エネルギーの大幅な導入と共に、現在の大量生産・大量消費社会のあり方を見直し、消費エネルギーを政策的に削減することによって、初めて再生可能エネルギーを主力とする長期的に持続可能な社会を構築できる。具体的には、産業界においては、エネルギーロスの削減、熱利用の効率化、廃棄物の少量化及び活用等が考えられる。他方で、市民生活においても高効率な家電製品等を用いたり、地産地消を心がけたり、安易に空調機器を多用するようなライフスタイルを見直すこと等が考えられる。

このように、再生可能エネルギーの大幅採用と消費エネルギーの削減の2つが推進されることで、将来世代のエネルギー需要を長期的に満足させることが可能となる。

5 再生可能エネルギーへの転換の実現可能性

現在(2012年末)、世界の風力発電と太陽光発電を加えた設備容量(3億8000万kW)は、既に世界中の原発の設備容量(3億7000万kW)を超えた。世界全体では、このように再生可能エネルギーによる発電設備容量の増加は急加速している。他方で原子力・石炭・石油による電力供給量は減少している情勢である。また、再生可能エネルギー及び原発のいずれも先進国を中心に普及してきたが、再生可能エネルギーの設備容量が原発の設備容量を超えたという実績は、わが国における政策転換の実現可能性を示している。適切な政策さえ採用されれば、既存の原発による発電量を賄うに足りる発電容量を備えることができることを実証している。

他方で、再生可能エネルギーは太陽光や風力などの自然エネルギーを利用するものであるから、不安定であり、従来の化石燃料や原子力による発電には代替しえないとの主張もあった。しかし、地熱や小水力などは出力変動が少ない発電方式である。また、地域間の系統連系を強化するなどの広域的運用をなすことで出力の平準化が可能であるし、スマートグリッドの普及がされれば、供給量に応じた需要調整も可能となる。したがって、再生可能エネルギーによって今後の電力需要を充足していくことは十分に可能である。

従来は、再生可能エネルギーにより全てのエネルギー需要を充足していくことは夢物語であるかのように語られてきた。しかし、国単位でもデンマークやドイツでは、政府の方針として今世紀半ばには自然エネルギーによるエネルギー供給率100%の目標を掲げている。環境先進国では既に現実の目標として再生可能エネルギーによるエネルギー自給を掲げているのである。わが国は、再生可能エネルギーの分野にて、技術的には世界を牽引してきたといっても過言でない。したがって、わが国の卓越した技術力をもってすれば、再生可能エネルギーによるエネルギー自給をなすことも、将来的には技術的観点からも克服できるはずの課題である。

したがって、わが国においても、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー政策へと転換していくことは現実的に可能である。そして、今後技術的課題も克服されることが見込まれることからすれば、適切な施策を行っていくことで、将来的に原子力や化石燃料に依存することなくエネルギー需要を満たしていく可能性は十分にある。

第2 再生可能エネルギー大幅導入のための施策

1 新規参入・事業拡大のための施策

再生可能エネルギーの大幅な導入をなすためには、発電事業全体の規模の大幅な拡大が必要である。既存の発電事業者だけでなく、多種多様な企業・団体の参画がなされれば、発電事業全体の規模拡大が見込まれる。同時に、既存事業者・新規事業者のいずれも再生可能エネルギーによる発電事業者として拡大・発展していくことにより、発電事業全体の事業規模の拡大が見込める。このため、発電事業者の新規参入と発電事業者の事業拡大をなすための施策が必要となる。

(1)優先接続の実質的保証

わが国は、再生可能エネルギーによる発電設備と送電網との優先接続を原則としつつも、接続拒否を可能とする例外を認めている。風況の良い場所は、北海道・東北などに集中しており、これら電力需要の小さなエリアでは需給調整が困難である。このため、風力発電を行うに際して一般電気事業者(電力会社)から高額な蓄電池の設置などの条件を付されるなど、事実上系統接続を拒否されている。しかし、再生可能エネルギーによる発電が事業として成り立つためには、発電した電力を送電網へ送電出来ることが必要不可欠である。

そのため、再生可能エネルギー発電施設への優先接続を実質的に保証し、例外を設けるとしても極めて限定的なものとするべきである。

(2)系統接続費用の負担軽減

系統連系(発電設備を送電線につなぐこと)を行うためには、一般電気事業者所有の送電網と発電設備の間に送電線を設置しなければならないところ、この設置費用は主に発電事業者が負担しなければならない。風力発電をはじめとする再生可能エネルギーによる発電所は、人里離れた地域に設置されることが多い。発電事業者はそこから接続が可能な容量の大きな送電線がある場所まで、送電線の枝線を長距離設置しなければならない。その設置費用は、非常に高額であり、1㎞あたり1億円とも言われる。また、近隣に送電線があっても容量が乏しい場合には、その系統の強化費用も発電事業者の負担とされている。

このような高額な費用負担が、再生可能エネルギー事業への参入を阻害している。そこで、 新規発電所設置にあたり必要となる系統接続費用(送電線設置・既存の送電線の容量拡大)については、発電事業者の費用負担を軽減すべく配送電事業者や利用者全体で負担することが必要である。

(3)長期安定的な買取価格の設定

わが国では、2012年7月固定価格買取制度を導入した。同制度は、再生可能エネルギーによる電力を一般電気事業者が買い取る際の価格を買取開始時の価格で長期間固定することで、再生可能エネルギーの普及拡大と市場の拡大を促すものである。

しかし、わが国ではこの買取価格が法律に明記されていない。買取価格は調達価格等算定委員会で審議され、年度毎に変動することが予定されている。そのため、価格決定の明確さに欠け、事業上の予測をたてにくい。このため、計画・調査段階から実用までに、一般に3年~10年の期間が必要とされる地熱発電や風力発電においては、必ずしも事業者の参入が促進できていない。

そこで、買取価格そのものを法律上規定するなど、新規事業者が買取価格を予見して事業の安定化を図れるように長期安定的な買取価格の設定をすべきである。

(4)地域間の電力融通量の拡大

電気はその性質上蓄えにくいため、安定的に電力供給するためには、その時々の消費電力量に合わせて発電電力量を制御、調整しなければならない(「同時同量の原則」)。ところが、再生可能エネルギーの中には、風力発電や太陽光発電のように、気象条件により発電量が大きく左右され、発電量の制御が困難なものがある。また、再生可能エネルギーにより発電できる電力量には地域ごとに偏りがある。そのため、再生可能エネルギーによる発電割合が増加した場合、安定的に電力供給を行うためには、地域間で電力を融通し合うことが不可欠である。

しかし、わが国では、国内10社の一般電気事業者は、地域ごとに需要を賄う地域完結型の構造であり、一般電気事業者間で電力を融通し合う体制にはなっていない。また、西日本と東日本とで異なる周波数が用いられているため、東西日本を繋ぐ連結設備の能力は極めて不十分である。

このように、地域間の電力の融通が困難であることが、再生可能エネルギーによる発電の需給調整を困難にしている。そこで、地域間での需給調整能力を確保するために、わが国のすべての地域間で大規模な電力の融通を可能とする地域間の連系能力の大幅な強化が必要である。

(5)既存の権利との調整

再生可能エネルギーは小規模分散型で広範囲に設置する必要がある。そのため、再生可能エネルギー導入にあたっては、既存の権利との調整が必要な場面が多くなる。風力発電の適地の多くは、森林法、農林法、自然公園法等による立地制限を受ける。洋上風力発電施設を設置する場合は、各漁業協同組合が有する漁業権との衝突がある。地熱発電所の候補地の多くは自然公園や温泉地に位置し、自然公園では自然公園法によって工作物設置等の開発行為が制限される。更に、地熱発電に適した地域の多くには温泉が存在するため、温泉事業者との摩擦が生じることが多い。また、河川を利用して水力発電を行う場合、原則として、河川法に基づき取水により影響を受ける人や団体(水利使用許可受者、施設管理者等)の同意が必要となり、手続が非常に煩雑になる。

わが国では、これらの既存の権利との関係を調整出来る法制度や調整機関の整備は不十分であり、発電事業者が自力で既存権利者との調整を行うことを余儀なくされている。そこで、このような権利調整をするための法整備及び相互の権利関係調整のための専門的機関を設置することが必要である。

2 発電事業の公平・公正な取引市場の早期形成

(1)発送電分離

わが国の日本の電力供給システムは、発電・送電・配電・小売という電力を供給するための機能を、各地域において一つの一般電気事業者(九州電力など)が全て握るという発送電一貫体制が採られている。そのため、電力自由化が進んだとしても、発電市場や小売市場で圧倒的な市場支配力を誇る一般電気事業者が送電網まで所有しているため、新規参入者は送電網利用にあたって高額な託送料を支払わざるを得ないなど、これを公正に利用できない。

そこで、現在検討されているのが、発電事業者と送電・配電事業者を分離する発送電分離である。公平・公正な取引市場を形成するためには、 発送電分離は必要不可欠な施策であることから、実効的な発送電分離を早期に実現することが必要である。

(2)電力市場の全面自由化の早期実現

現在、概ね50kw以上の大口の需要者に対する売電は自由化されているが、一般の家庭や中小企業などの小口の需要者に対する売電の自由化はなされていない。その結果、一般電気事業者においては、小口の需要者に対する価格を下げる理由がなく、世界的に見て日本の電力料金は高くなっている。また、市民が、再生可能エネルギーによる発電を行っている事業者から電力を購入したいと望んでも、現状では発電事業者を選択することができない。電力の小売の全面自由化がなされない限り、市民や中小企業などの小口の需要者は、自己の意思として再生可能エネルギーによる発電された電力を購入することすらできない。

そこで、市民に対する売電事業を含めた電力市場の全面自由化を早期に実現すべきである。かかる全面自由化がなされてこそ、新規参入事業者も一般電気事業者と対等に競争をすることが可能となる。

3 社会的合意(社会の共通認識)の形成

再生可能エネルギーの導入を推進するためには、国として再生可能エネルギーを主体とした政策へ転換することが求められる。また、消費エネルギーの削減のためには国民一人一人の理解と意識行動が必要である。

しかし、わが国では従来、原発推進が国策とされ、それに偏重した情報が一方的に提供されてきた。他方で、原発の有する問題点や、再生可能エネルギー等の長期的なエネルギー政策に関しては十分な情報提供がなされず、国民の中での議論も極めて不活発であった。

そこで今後は、国民がエネルギー政策に関する議論に参加できるよう十分な情報と議論の場を提供し、再生可能エネルギー導入及びエネルギー削減に向けた社会的合意を形成していくことが必要である。

第3 当連合会、所属弁護士会としての取組の必要性

1 エネルギー消費量の削減

前述のように当連合会は長期的視点に立ち、持続可能な社会の実現を強く求めるものであり、その社会の構成員である当連合会及び所属の弁護士会は、エネルギー消費量の削減を目指した最善の努力を行う必要がある。

当連合会及びその所属弁護士会は、その構成員たる弁護士とともに、業務において膨大な量の紙資源、電力及び化石燃料を消費し、膨大な量の廃棄物を排出している。このうち、紙資源は大気中の二酸化炭素が固定化したものであり、廃棄物として排出されれば、化石燃料と同様に大気中の二酸化炭素を増加させる。また、日常的にOA機器、冷暖房などにより大量の電力を使用しているし、自動車を中心として移動に際しては化石燃料を消費している。他方で、廃棄物の処理にも、再利用及び中間処理などに多くのエネルギーが消費されており、その排出量を減少させることがエネルギー消費量の抑制につながる。

そこで、当連合会は所属弁護士会とともに紙や電気、石油、天然ガスなどの使用量や廃棄物の量を削減することでエネルギー消費量を削減する努力を行う必要がある。

2 再生可能エネルギーの採用

当連合会は本宣言において持続可能な社会の実現に向けて再生可能エネルギーの大幅導入のための施策を求めている。そうである以上、自らも積極的に持続可能な社会の構築のために再生可能エネルギーの導入を進める必要がある。

もちろん、建物を所有していない所属弁護士会もあり、所有する設備等への発電設備の設置が現実的に不可能な場合もある。しかし、そのような場合でもグリーン電力(再生可能エネルギーによって発電された電力)を購入することやグリーン電力証書やグリーン熱証書を購入することなど可能な範囲で努力をすることが出来る。

他方で、例えば条件さえ合致すれば各弁護士会の会館などに採用可能な範囲で風力・太陽光・小水力発電設備、地中熱や太陽熱利用設備などを設置することなども検討しうる。近時、小型の安価な風力発電設備も販売されているし、太陽光発電設備もその普及速度に応じて価格が大きく低下しつつある。現に、沖縄弁護士会では太陽光発電設備を設置しており、佐賀県弁護士会でも地中熱利用設備を設置している。このように、当連合会所属の弁護士会において、先進的な取り組みがなされてきた事実は、当連合会及び各弁護士会において再生可能エネルギーの積極的な採用が現実的に対応可能であることを示している。

このように、現在では、再生可能エネルギーの導入手段には、非常に多くの選択肢があり、当連合会及びその所属弁護士会の実情に応じて、可能な選択肢から漸次導入をしていくことができる。そうである以上、当連合会は各所属弁護士会とともに、実情に応じて様々な選択肢を検討し、少しずつでも可能な限り再生可能エネルギーを利用することが必要である。

3 環境マネジメントシステム等の採用検討

これらを実効性のあるものとするためには、抽象的に自律的に努力を行うだけではなく、環境マネジメントシステム等を採用することが重要である。ここで、環境マネジメントシステムとは、企業や団体等の組織が環境方針、目的・目標等を設定し、その達成に向けた取組(環境マネジメント)を実施するための組織の計画・体制・プロセス等の仕組みをいう。外部機関の定めた規格に基づいたシステムを採用することで、外部機関からの審査・認証を受けることが可能である。このように、外部機関から定期的に審査・認証を受けることで、効果的に環境に配慮した取組が可能であるし、客観的に環境へ配慮している取組をしている事実が明らかとなることから社会的な評価を得ることができる。

既に、日弁連においては2008年3月に環境マネジメントシステムの一つであるKES(環境マネジメントシステムスタンダード)を導入した。各弁護士会では、第二東京弁護士会(KES)、大阪弁護士会(エコアクション21)、京都弁護士会(KES)が既に環境マネジメントシステムを採用している。当連合会の構成員である沖縄弁護士会においても、既にKESの認証を受け、これにしたがった弁護士会の運用を行っている。

この点、外部機関による認証がなければ、消費エネルギーの削減や再生可能エネルギーの採用促進が出来ないわけではないが、その実効性を確保するために環境マネジメントシステムを採用することが望ましい。また、仮に環境マネジメントシステムの採用がなされなくとも、組織としてこれらの目的を達成するための組織体制の構築は必要である。

そこで、当連合会は、その所属弁護士会とともに、環境マネジメントシステムを導入する等の消費エネルギー削減及び再生可能エネルギー採用のための組織体制の構築に努力することを宣言する。

以上

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