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当連合会及び管内各単位会における国際交流を積極的に推進する決議

当連合会は、1993年4月1日、前年度末の理事会決議を受け、「管内弁護士会が行う国際交流、外国人の人権擁護、外国人相談、外国法制調査などの活動についての情報交換及び援助並びに当連合会が行う国際交流活動の企画、立案及び実施」を目的として当連合会に国際委員会を設置した。その後、当連合会国際委員会は、1995年から海外への研修旅行を企画、実施して諸外国との交流と相互の法制度・裁判制度等の研修を行う一方、管内の各弁護士会(以下「各単位会」という。)と連携し、各単位会と海外の弁護士会との国際交流を推進してきた。

これを受けて、各単位会は、それぞれ韓国、台湾、中国の地方弁護士会との間で、それぞれ名称は異なるものの友好・交流に関する協定を締結して、積極的に交流を行い、一定の成果をあげつつある。

このように、当連合会や各単位会が海外の弁護士会や法曹と交流し、これを深めることは、相互に、外国における人権擁護や外国の裁判・法律制度の実情等について知見を深めることに繋がり、ひいては、人権擁護のグローバル化に資するものといえる。

また、弁護士が、弁護士を始めとする海外法曹と交流し相互理解を深めることは、それ自体が異なる文化・異なる価値観を背景とする交流であるから、交流を通して、異なる価値観を知り、理解するという貴重な体験となる。このような体験は、弁護士が、多様な価値観の正しい理解を得る一助にもなり、弁護士としての職務を円滑に遂行するうえでも有意義であるといえる。

さらに、あらゆる国及び地域のボーダーレス化が急速に進んでいる今日、当連合会管内の法人や個人事業主の中にも海外取引を行っているものが少なくないこと、当連合会管内に外国国籍を有する者も多数生活していること等から、国際取引に係る法務や、在留外国人に係る家庭・相続などの法律問題において海外の弁護士等と共同して処理にあたらなければならない案件も存在し、今後さらに増加することが見込まれることに鑑みれば、当連合会管内の弁護士が必要に応じて海外の弁護士の紹介を受け、または、管内の弁護士を海外に紹介できるようなシステムを構築し、これを維持する必要性が認められるところである。

これについては、当連合会や各単位会レベルで海外の弁護士会との交流を行うことにより、個々の弁護士が、渉外業務を処理するにあたり海外の弁護士等の援助が必要となったり、海外の弁護士等から援助を求められた際、交流を通じて得られた関係を通して海外の弁護士等の紹介を受け、または管内の渉外法務に精通した弁護士を紹介することも可能となり、双方の依頼者のニーズに適切に対処しうる所以となろう。

国際交流が、人権擁護のグローバル化に資することや、弁護士としての資質向上に資することに留まらず、弁護士としての職務遂行上の情報、ノウハウを共有しうること等に鑑み、これまで、積極的に各単位会レベルでの交流を行い一定の成果を挙げているが、現状に満足することなく、更に交流を推進させ、相互の関係の深化を図ることが肝要であると考える。

また、経済のグローバル化の進化が著しい近時の状況に鑑みれば、当連合会や弁護士会における交流も、これまでの近隣アジア諸国を中心とした交流のみならず、グローバルな視点に立って多くの海外弁護士会との交流を行い、その範囲を拡大していくことを検討する時期にさしかかっていると思われる。

これらの事情を踏まえ、当連合会や各単位会がこれまで国際交流の分野で果たしてきた実績と成果を改めて確認しつつ、今後とも更に当連合会及び各単位会が国際交流を推進する必要が高いこと、また、国際交流の分野で国内の他連合会や弁護士会に率先して先進的な役割を果たすことも肝要との視点のもと、以下のとおり決議する。

当連合会及び各単位会は、国際交流のもつ意義と国際交流がもたらす効果に 鑑み、これまでの国際交流による成果を踏まえ、今後とも、積極的に海外の弁護士会を始めとする海外法曹との交流を深めることに努め、さらに、当連合会、各単位会の実情に応じて、新たな交流の機会を模索し、交流の範囲を拡大することを積極的に推進する。

2012年10月26日

九州弁護士会連合会

提案理由

第1 当連合会及び各単位弁護士会における国際交流の実績

1 当連合会は、1992年度末の理事会において当連合会内に国際委員会を設置することを決議し、これを受け1993年4月1日、「管内弁護士会が行う国際交流、外国人の人権擁護、外国人相談、外国法制調査などの活動についての情報交換及び援助並びに当連合会が行う国際交流活動の企画、立案及び実施」を目的として当連合会に国際委員会を設置した。
その後、当連合会国際委員会は、1995年から海外への研修旅行を企画、実施して諸外国との交流と相互の法制度・裁判制度等の研修を行う一方、各単位会と連携して各単位会と海外弁護士会との交流を推進してきた。

2 当連合会の交流について見ると、国際委員会が主体となって、1995年に中国(北京、上海)への研修旅行を実施したことに始まり、以来、英国領香港、米国(ホノルル)、韓国、オーストラリア、タイ、モンゴル、ラオス、ベトナム、フィリピン、シンガポール、中国(香港、マカオ)、台湾、マレーシア等のアジア諸国を訪問しての研修を毎年実施してきている。
当連合会が行う研修旅行は、管内のすべての弁護士に参加を呼びかけて実施されており、研修旅行に参加した弁護士には、海外の弁護士を中心とした法曹との交流や裁判所、検察庁、各種紛争解決機関等の見学及びそれに伴う関係者との真摯な意見交換などを通じて、海外法曹との相互理解を深めるとともに、海外の法律制度や裁判制度などを単に知識として吸収するのみならず、直接肌で知る機会が提供されてきた。

3 また、管内の各単位会は、当連合会国際委員会と連係しながら、各単位会の国際委員会を中心に、海外の弁護士会との交流を開始し、継続に尽力してきている。その結果、現在では、管内のすべての単位会が、それぞれ、韓国、台湾、中国の地方弁護士会との間で、名称は異なるものの友好・交流に関する協定を締結して、積極的に交流を行っている。
各単位会の友好・交流に関する協定の締結時期と交流弁護士会は以下のとおりである。

  • 福岡県弁護士会
    1990年から韓国の釜山地方弁護士会
    2010年から中国の大連市律師協会
  • 沖縄弁護士会
    1994年から台湾の台北律師公会
  • 長崎県弁護士会
    2003年から台湾の台南律師公会
  • 熊本県弁護士会
    2004年から韓国の昌原地方弁護士会(後に慶南地方弁護士会と改称)
  • 佐賀県弁護士会
    2006年から韓国の蔚山地方弁護士会
  • 鹿児島県弁護士会
    2006年から台湾の台中律師公会
    2012年から韓国の全羅北道地方弁護士会
  • 宮崎県弁護士会
    2009年から韓国の清州地方弁護士会(後に忠北地方弁護士会と改称)
  • 大分県弁護士会
    2010年から韓国の済州地方弁護士会

4 各単位会は、それぞれの交流相手方弁護士会との間で相互訪問を行うばかりではなく、一定のテーマを設け、お互いの法制度や司法制度等に関する実務の動向や問題点などについて幅広く意見交換を行ってきた。例えば、近年では、複数の単位会における交流において、相互の国のロースクール制度やその問題点について意見交換が行われてきたほか、取調べの可視化についても、韓国や台湾の弁護士会との交流会における研修テーマに取り上げられるなどしており、それぞれの国情に応じた問題意識に基づいて実りある交流が行われている。

5 また、当連合会は、各単位会とも連携のうえ、当連合会大会や当連合会主催のシンポジウムなどにも積極的に海外の弁護士を招待し、当連合会管内の弁護士に対して、海外の法律制度等を知る機会を提供してきた。今回の当連合会長崎大会にも、台南律師公会の弁護士と大田地方弁護士会の弁護士が臨席している。

6 以上のとおり、当連合会は、当連合会国際委員会を中心として、これまで、管内のすべての弁護士に対して、海外の弁護士を中心とした法曹との交流と意見交換の機会を提供することで、海外における人権擁護や海外の法律・裁判制度の実態などについての知見を深める機会を提供しながら、単位会レベルの海外弁護士会との交流を推進してきており、その成果を挙げてきた。

第2 国際交流の意義

1 上記のとおり、当連合会や各単位会が海外の弁護士会と交流を行うことは、相互に、外国における人権擁護や他国の裁判・法律制度の実情等について知見を深めることに繋がり、ひいては、相互の国の弁護士にとって、自国の人権擁護の状況や裁判・法律制度の問題点を認識するための貴重な契機となるものであるから、このような交流を地道に継続することは、我が国の法律制度の改善に繋がりうるのみならず、ひいては、人権擁護のグローバル化に資するものといえる。
また、弁護士がその職務を遂行する際に、多様な価値観をもつ当事者や相手方の主張を正確に理解することは、法的紛争を早期かつ適切に解決するうえで必須であるといえよう。しかるに、我が国の弁護士が、海外の弁護士や法曹との交流を通じて相互理解に努めることは、異なる文化・異なる価値観を背景とする法曹同士の交流であることから、それ自体が刺激的かつ知的好奇心を満たす体験となるのみならず、交流を通して異なる価値観に接する絶好の機会であって、その意味で、弁護士が、その職務を円滑に遂行するうえで有意義な体験といえよう。さらに、異文化との交流を通じて弁護士としての視野が広がり、知見を深め、教養を深める所以ともなろう。
このように、弁護士が国際交流を行うことは、弁護士に深い教養の保持と高い品性の陶やに務め、法令及び法律事務に精通しなければならないと定める弁護士法第2条の理念にも沿うものとなる。

2 また、経済取引のグローバル化が急速に進んでいる今日、当連合会管内の法人や個人事業主の中にも、アジア諸国を始めとする外国法人等との取引を行っているものが少なくなく、また、当連合会管内にも外国国籍を有する者が多数生活していることなどから、国際取引に関する法律業務や、在留外国人に係る家庭・相続などの法律問題において海外の弁護士等の援助を必要とし、または海外の弁護士と共同して処理にあたらなければならない案件が存在し、今後も、そのような案件が増加することが見込まれる。
これらの事情に鑑みれば、当連合会管内の弁護士が、必要に応じて海外の弁護士や紛争解決機関の紹介を受け、海外からの要請があれば管内の渉外法務に通じた弁護士を紹介できるようなシステムを構築し、これを維持する必要性が認められる。
これについては、各単位会が海外の弁護士会との交流を行うことで、海外の弁護士との協力が必要となった弁護士は、当該弁護士の所属単位会や当連合会管内の他の単位会が交流を通じて培ってきたパイプを通して、海外の弁護士の紹介を受け、または、海外からの要請を受けた際に、管内の弁護士を紹介、推薦することが可能となる。このように、弁護士会レベルの交流を行い、人的パイプを設定・維持しておくことは、個々の弁護士が渉外業務を処理する必要に迫られた際に、依頼者のニーズに適切に対処することを可能とするといえよう。
このように、弁護士会が国際交流を行うことは、渉外事件の円滑な処理に資するという実務的観点からも意義が大きいといえる。

3 以上に鑑みれば、弁護士会及び弁護士による国際交流が有意義なものであることに多言を要しない。

第3 当連合会及び各単位会における今後の国際交流

1 上記のとおり、当連合会は、これまで、当連合会の主催による海外研修を行う一方、各単位会レベルでの交流を積極的に推進してきているが、国際交流は継続が肝要であり、相互交流を継続することにより深化・発展していくものであことに鑑みれば、今後益々交流を継続し発展させ、交流のレベルを深化させることに注力することが重要と思われる。
更に、経済のグローバル化が急速に進んでいる今日の国際状況に照らせば、当連合会や各単位会の交流も、これまでの近隣アジア諸国を中心とした交流に留まらず、他の諸外国の弁護士会との交流を積極的に推進することが求められ、その必要性も高い。

2 今年度は、当連合会が国際委員会を設置した1993(平成5)年度から数えて20年の節目の年度となることに鑑み、当連合会及び各単位会がこれまで取り組んできた国際交流の実績と意義を改めて確認し、将来の交流の方向性等について考えるにふさわしい年度といえる。
そこで、当連合会が国際交流の分野で果たしてきた実績と意義を改めて確認しつつ、今後の国際交流の方向性を示す決議を行うことにより、当連合会が、国際交流を更に推進し、今後とも国際交流の分野で積極的役割を果たし続けることを示す必要性があると考え、本決議案を提案する。

以上

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