第6回法曹養成制度検討会議に関する声明
平成24年12月25日に第6回法曹養成制度検討会議が、平成25年1月23日に第7回法曹養成検討会議がそれぞれ開催され、「司法試験について(1)」「司法試験について(2)」をテーマとして検討が予定されている。当連合会は、法曹養成制度検討会議に対し、同テーマの検討にあたり、次の点を考慮するよう求める。なお、この声明の発出にあたっては、本年9月に当連合会に所属する各単位弁護士会で実施したアンケート調査の結果を考慮したものであり、アンケート実施状況及び各単位弁護士会のアンケート回収状況は当連合会が発出した平成24年11月18日付「第4回法曹養成制度検討会議に関する声明」末尾に添付しているとおりである。
1 受験回数制限について
現行司法試験では、司法試験受験資格として、法科大学院を修了していることに加えて、司法試験受験が法科大学院修了から5年以内で受験回数が3回以内であることが要求されており、法科大学院修了者のうち平成17年度から平成19年度までの修了者の中には、現に受験資格を喪失した者が出てきている。
平成17年度修了者(受験者実数2122人)のうち受験回数制限内に合格できなかった者は573人、平成18年度修了者(受験者実数4244人)のうち受験回数制限内に合格できなかった者は2056人,平成19年度修了者(受験者実数4658人)のうち受験回数制限内に合格できなかった者は2385人であり、法科大学院を修了しながら受験回数制限のために受験資格を喪失した者が3年間で合計5014人に達している(第4回検討会議・資料6)。3年間の法科大学院修了者の受験者実数合計1万1024人の45.48%に上る。
受験回数制限のために受験資格を喪失した法科大学院修了者における法学部・非法学部別、社会人、学部系統別などの統計資料はないが、司法試験最終合格者数における法学部・非法学部系の別の統計資料(第3回会議配付・資料17)によると、平成28年から平成20年までの3年間の新司法試験における対受験者最終合格率は、既習者・法学部、既習者・非法学部、未修者・非法学部、未修者・法学部の順に高くなっており、その割合からみても、受験資格を喪失した法科大学院修了者には相当数の非法学部系の者が含まれていると考えられる。そして、このような傾向が未修者、特に社会人の法科大学院入学者数の減少をもたらしていると考えられる。
当連合会が行った所属会員に対するアンケート調査では、「司法試験受験回数制限について」との設問(回答率35.13%。単位弁護士会別の回答率については第6問回答集計表参照。)に対し、
制限は撤廃すべき 66.76%
5年以内5回との日弁連提言を尊重すべき 19.15%
現行のままでよい(5年以内3回) 10.81%
わからない 2.74%
その他 0.55%
という回答結果であった。
「制限は撤廃すべき」との意見における選択理由としては、「法曹を志す者の受験の機会を不当に制約するものである
が57.59%、「多種多様な人材の確保に資する
が37.70%であった。
検討会議では、司法試験における受験回数制限は、法科大学院を修了していながら法曹を志す機会さえ奪われてしまった人を大量に発生させ、法曹に多種多様な人材を確保する上で障害となっていることを十分に考慮した上で、司法試験における受験回数制限を撤廃することを検討すべきである。
2 予備試験について
日弁連は、法科大学院の改善に関する具体的提言において、「予備試験については、その実施状況を検証しつつ、経済的な事情等により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得の途を確保するとの制度趣旨を踏まえた運用をすること」を求めているところである。
平成23年度予備試験の受験者数は6477人で、最終学歴が法科大学院修了(396人)及び法科大学院在学中(198人)の者を控除した受験者数は5883人である(参考資料3・目次50)。これは平成23年度司法試験受験者数8765人の約67%に相当する。平成24年度予備試験の受験者数は7183人で、最終学歴が法科大学院修了(492人)及び法科大学院在学中(555人)の者を控除した受験者数は6136人である(参考資料3・目次51)。これは平成24年度司法試験受験者数8387人の約73%に相当する。
平成23年度予備試験の受験者数6477人を職種別にみると、公務員599人、会社員1287人、自営業335人など多種多様である(参考資料3・目次50)。平成24年度予備試験の受験者数7183人を職種別にみても、公務員618人、会社員1236人、自営業337人などほぼ同様である(参考資料3・目次50)。
予備試験は、法科大学院課程の修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的として行われている(司法試験法第5条第1項)。ところで、平成24年度司法試験の合格率は約25%であるところ、予備試験合格に基づく司法試験受験者の合格率は約68%と約2.7倍に達している。予備試験合格に基づく司法試験受験者のうち大学生は28人で合格者は26人であり、合格率は約93%と司法試験受験者の合格率の約3.7倍に達している。このことからすると、法科大学院における法曹教育を受けていない予備試験受験者の中には法科大学院修了者と同等の基礎的素養を有する者が予備試験合格者数以上に相当数いることが推認される。ちなみに、平成24年度予備試験の論文試験合格者数は123人(受験者数の1.46%)、口述試験合格者は116人(同1.38%)であるが、論文試験採点対象者1293人(同15.42%)の平均点は195.82点で、平均点に達する者は658人(同7.85%)である(参考資料3・目次51)。
検討会議では、予備試験が、経済的事情等により法科大学院を経由しない者にも法曹資格を取得する途を確保するために設けられた趣旨から、それらの者にも公平に新司法試験の受験資格が与えられるように配慮する必要がある(司法試験管理委員会「予備試験の実施方針について」第1項参照)ことを踏まえ、現に多種多様な人材が司法試験の受験資格を求めて予備試験を受験しており、予備試験受験者の相当数が法科大学院修了者と同等の基礎的素養を有していることを十分に考慮した上で、予備試験合格者数のあり方を検討すべきである。
2012年(平成24年)12月19日
九州弁護士会連合会
理事長 山 下 俊 夫