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第7回法曹養成制度検討会議に関する声明

平成25年1月23日に第7回法曹養成制度検討会議が開催され、「司法修習 について
をテーマとして検討が予定されている。当連合会は、法曹養成制度検討会議に対し、同テーマの検討にあたり、次の点を考慮するよう求める。なお、この声明の発出にあたっては、本年9月に当連合会に所属する各単位弁護士会で実施したアンケート調査の結果を考慮したものであり、アンケート実施状況及び各単位弁護士会のアンケート回収状況は当連合会が発出した平成24年11月18日付「第4回法曹養成制度検討会議に関する声明」末尾に添付しているとおりである。

前期集合修習の復活について

司法修習については、改正裁判所法第67条1項において修習期間は「少なくとも1年間」と定められ、同条第3項において修習に関する事項は最高裁判所が定めるものとされている。また、司法修習生に関する規則第5条は、実務修習期間を「少なくとも10ヶ月」とした上で(第1項)、「少なくとも」4ヶ月は裁判所、2ヶ月は検察庁、2ヶ月は弁護士会で修習しなければならないと定めている(第2項)。

平成18年4月以降、新司法試験に合格した者に対する司法修習は1年間とされ、10ヶ月の実務修習(8ヶ月の分野別実務修習・2ヶ月の選択型実務修習)と2ヶ月の集合修習の課程で構成される新司法修習に改められた。
59期以前の旧司法修習では、修習期間は1年6ヶ月であり、最初に3ヶ月間の前期集合修習を行った上で、1年間の実務修習を行い、再度3ヶ月間の後期集合修習が行われていた(52期以前の旧司法修習では修習期間が2年間で、前期集合修習4ヶ月、実務修習1年4ヶ月、後期集合修習4ヶ月であった。)。
これに対し、平成18年11月から開始された新60期以降の新司法修習では、旧司法修習における前期集合修習は廃止され、修習開始直後より、集合修習を行うことなく、直ちに実務修習に入ることになっている(参考資料3「司法試験・司法修習について」の目次55「新司法修習の構成」・p177参照)。

法曹の養成に関するフォーラム・論点整理では、本論点の検討状況として、「従前の司法修習における前期修習を法科大学院がすべて代替するという前提には立っておらず、そうすることは現実にも困難である。他方、いわゆる即独弁護士の増加を背景として、法曹としての初期OJTの必要性が高まってきていることもあり、その双方との連携を視野に入れて司法修習の在り方を考える必要がある。」との意見が述べられている。
また、法曹養成制度に関する検討ワーキングチームにおける意見として、「法科大学院における法律実務教育の内容は、法科大学院の間で格差があるにもかかわらず、これを補う機会のないまま、司法修習の最初から実務修習が行われる点に問題があるとして、実務修習の開始前に導入的な研修を行うべきであるとの意見があった。」とし、「(この意見に対しては、)法科大学院における実務教育を従来の司法修習における前期修習を代替するものと位置づけるのは誤解であり、実際にも、それを完全に代替するようなものとすることは、法科大学院のカリキュラム構成上、可能でなく適切でもないとの指摘があり、法科大学院における実務教育と司法修習の役割分担を明確にすべきではないかとの意見があった。」としている。
すなわち、有識者の間においては、法科大学院における実務教育は旧司法修習において前期集合修習が果たしていた役割を代替するものではなく、実務修習へ適切に導入するための前期集合修習が必要であることが認識されているところである。

当連合会が行った所属会員に対するアンケート調査でも、「前期修習の復活について」との設問(回答率35.08%。単位弁護士会別の回答率については第7問回答集計表参照。)に対する回答結果は、
     賛成    90.68%
     反対     3.01%
     わからない  5.21%
     その他    1.10%
であり、回答をした会員の9割(662人)が前期修習の復活について「賛成」との意見を表明しているが、その選択理由としては、「実務修習への導入として必須である
が56.07%、「以前の前期修習における法曹養成の代替を法科大学院には期待できない
が40.38%であった。

日本弁護士連合会は、2011年3月27日付法曹養成制度の改善に関する緊急提言において「少なくとも緊急の対策として、司法修習の一環として、実務修習開始前に、法曹三者による何らかの集合的な修習を実施する必要がある。」と提言し、同年8月19日付法科大学院教育と司法修習との連携強化のための提言において「合同での冒頭修習の実施が困難な場合には、各弁護士会が司法修習の開始当初に約2日程度をかけて冒頭修習を実施することについて、司法研修所及び配属先の裁判所・検察庁に対し、理解と協力を求める。」と提言した。そして、日本弁護士連合会は、新64期以降、実務修習への導入のための事前研修を行い、各単位会において弁護修習の冒頭に導入研修を行っており、新66期からは全単位会において弁護導入講義を実施することとしている。

しかし、その研修内容は、旧司法修習の前期集合修習において行われていた弁護の分野における実務修習のための導入修習ほど充実した内容には到底至っておらず、またそのような内容の研修を行うことは極めて困難である。その他の分野については、事前研修も行われていない。

すべての法科大学院において必ずしも十分な実務導入のための研修が行われていない現状において、司法修習生は、最短でも3月の法科大学院修了から11月の実務修習開始まで約8ヶ月間、現行の受験回数制限のもと最長で約5年8ヶ月間もの間実務導入のための研修を全く受けないままに実務修習に入ることを余儀なくされており、そのような状態で2ヶ月間という短期間において民事裁判、刑事裁判、検察、弁護の各分野の実務修習において期待される十分な成果を得ることはできないと言わざるを得ない。

司法修習は、法曹の担い手を養成するという極めて重要な国家の施策であり、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護の各分野における実務修習を効果的に行うことができるように環境を整備することは、国家の責任である。

検討会議では、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護の各分野における実務修習を効果的に行うために必要な期間と集合修習の役割を十分に考慮した上で、実務修習のための導入修習としての前期集合修習を復活することを検討すべきである。

2013年(平成25年)1月16日

九州弁護士会連合会
理事長 山 下 俊 夫

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