MV-22オスプレイの普天間飛行場配備に反対する声明
1 米国防総省は、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に垂直離着陸機MV-22オスプレイを2012年10月に配備することを計画し、その実現に向け、同年7月23日、12機のMV-22オスプレイを岩国基地に陸揚げした。
しかしながら、オスプレイの普天間飛行場配備は、沖縄県民並びに飛行ルート上の各地域住民の生命・身体の安全の保障という見地から許されるべきものではない。
2 オスプレイは、開発段階から事故を繰り返していたばかりでなく、2005年に量産体制に移行した後も事故が絶えず、最近も、2012年4月11日、米海兵隊のMV-22がモロッコでの訓練中に墜落し搭乗員2名が死亡する等の事故を起こし、さらに同年6月14日、フロリダ州で訓練中のCV-22オスプレイ(米空軍向けの同一機種)が墜落し乗員5名が負傷する事故を起こした。
米海兵隊は、これらの墜落事故について、人為的ミスが原因であることを強調する。
しかしながら、わずか2か月あまりの間に2度の墜落事故が発生していること自体看過できないものであり、仮に、これらの事故が操縦ミス等の人為的な原因によるものであったとしても、それが直ちに墜落事故に繋がっている事実からすれば、オスプレイ自体が事故発生の危険性が極めて高い機種であるといわざるをえない。
加えて、2010年にアフガニスタンでCV-22が墜落した事故を調査した事故調査委員長が、米空軍側から圧力を受けて「人為的ミス」を原因とするよう報告書の内容を変更させられたとの報道や、上記アフガニスタンの事故時に搭乗していた操縦士と航空機関士が「空軍の中で最も経験豊富で優秀な人物の一人」とされていたとの報道などがなされており、事故調査の信ぴょう性やオスプレイの危険性の判断に重大な疑念を生じさせている。
3 そもそもオスプレイは、設計上、「オートローテーション機能」(エンジン停止時に、機体が落下する際に生じる気流を利用して安全に着陸する機能)に欠陥があるとの指摘や、操縦ミスで失った制御を取り戻そうと操作しても、低速飛行時はフライトコンピューター(操縦制御装置)が操縦士の指示に従わず、そのまま墜落する可能性が高いとの指摘がされているなど、その機種構造において極めて重大な危険をはらんでいる。
4 宜野湾市の中心に位置する普天間飛行場においては、2004年8月13日、米軍の大型ヘリコプターCH53Dが沖縄国際大学敷地内に墜落するという事故が起き、市街地での軍用機墜落の危険が現実のものとなった。このような事実から、司法の場においても、普天間飛行場が「世界一危険な飛行場」と指摘されていることに言及され、その危険性により住民の苦痛が増大していると判断されるに至ったのである(普天間米軍基地爆音差止等請求控訴事件2010年7月29日福岡高裁那覇支部判決)。
オスプレイの配備は、現状においてさえ「世界一危険な飛行場」と評されている普天間飛行場の危険性をより一層増大させるものであり、同飛行場周辺住民の生命・身体の安全という見地から決して許されるべきものではない。
5 米国においては、ニューメキシコ州のキャノン空軍基地におけるCV-22低空飛行訓練計画が地元住民の反対によって中断され、ハワイ州でのMV-22訓練計画が考古学的な資源への影響、騒音や安全性に対する地元住民の不安、稀少生物の生息環境破壊への懸念に配慮して一部の空港で取りやめられた。
他方、米国が発表した「MV-22の普天間飛行場配備及び日本での運用に関する環境レビュー」によれば、オスプレイが沖縄本島のほぼ全域を飛行することが明らかとなっただけでなく、全国7ルートで低空飛行訓練をすることが予定されていること、そのうち九州においても、大分県から福岡県、熊本県、宮崎県の山間部を飛行する「イエロールート」、伊平屋島からトカラ列島に至る「パープルルート」が含まれていることなどが明らかとなっており、オスプレイの飛行による危険は全国に広がるといわねばならない。
6 このような危険なオスプレイの配備に対し、沖縄県内41市町村議会の全てがこれに反対する意見書や決議案を可決し、宜野湾市において本年6月17日、「普天間飛行場へのオスプレイ配備等に反対し、固定化を許さず早期閉鎖・返還を求める宜野湾市民集会」が開かれた。さらに、本年9月9日には、沖縄県宜野湾市においてオスプレイ配備に反対する県民大会が開催され、約10万人が参加した。このとおり、まさにオスプレイ配備反対は沖縄県民の総意なのである。
7 これまで当連合会では、米軍基地問題について、1976年に米軍統治下における沖縄県民の損失及び損害について日本政府に早急な補償措置を講ずることを求める宣言、1996年に沖縄の米軍基地の整理・縮小及び日米安全保障条約に基づく「地位協定」の見直しを求める決議、2001年に日米地位協定の改定を求める宣言を行い、さらに2004年には、同年8月に発生した大型ヘリ墜落事故について、その事故処理に対する抗議と事故原因の究明及びその公表を求める理事長声明を発するなどしてきた。
今般のオスプレイ配備の強行も、沖縄県民並びに飛行ルート上の各地域住民の生命身体そして財産に対する重大な侵害のおそれを生じさせるものであり、憲法が保障する幸福追求権の一内容である人格権(13条)、そして、平和のうちに生存する権利(前文、9条、13条など)の精神に反するといわざるを得ず、当連合会として到底これを看過することができない。
当連合会はこのようなオスプレイ配備に対して強く抗議し、米国政府に対し、オスプレイの普天間飛行場への配備計画を即時撤回するよう強く求めるとともに、日本政府に対して、オスプレイの日本配備を白紙に戻すべく米国と交渉するように強く求めるものである。
2012(平成24)年9月10日
九州弁護士会連合会
理事長 山 下 俊 夫