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「大崎事件」第2次再審請求棄却決定に関する理事長声明

本日,鹿児島地方裁判所は,「大崎事件」(被害者が牛小屋の堆肥の中から遺体となって発見され,請求人(原口アヤ子さん)らが,殺人及び死体遺棄の罪に問われた事件)に関する第2次再審請求事件について,再審請求を棄却する決定をした。

原口さんは,逮捕以来一貫して無実を訴え続けたが,第一審で有罪判決を受け,控訴審及び上告審でも上訴を棄却され,服役を余儀なくされた。

原口さんは,1995年に第1次再審請求を行い,2002年に鹿児島地方裁判所は再審開始を決定した。ところが,2004年に福岡高等裁判所宮崎支部はその開始決定を取消して,再審請求を棄却し,2006年に最高裁も特別抗告を棄却した。

今回,原口さんは,新たな証拠を提出するなどして,第2次再審請求に及んだが,裁判所は充分に審理を尽くすことなく,原口さんらの請求を棄却したものであり,本決定には,以下のような問題点がある。

弁護人が,共犯者とされる3名に知的障がいが存在したにもかかわらず,取調べだけでなく,法廷においても,障害に対する十分な配慮が行われなかったことを理由に,それらの供述の信用性については慎重に判断されるべきであると主張したが,本決定では,それが一切考慮されなかった。

また,裁判所は,弁護人が新証拠として提出した法医学鑑定及び供述心理鑑定を行った鑑定人に対する証人尋問すら実施せず,新証拠の証拠価値に関する十分な検討を怠った。

さらに,検察官が作成した証拠の標目につき,弁護人が再三にわたって開示を要請したにもかかわらず,裁判所は検察官にその開示を求めることもしなかった。

近年,再審無罪判決が出された「布川事件」や「東電OL殺人事件」においては,検察官が有していた証拠の開示がなされたことが,再審開始,再審無罪につながっている。上記のような,裁判所の消極的な審理態度は,それらの事件で得た教訓を無視するに等しく,到底看過し得ないものである。

当連合会は,無辜の救済という再審制度の意義を無に帰するような審理態度の改善を求めるとともに,本件の即時抗告審においては,充分な審理がなされることを希望する。

2013年(平成25年)3月6日

九州弁護士会連合会
理事長 山 下 俊 夫

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