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特定秘密の保護に関する法律の廃止を求める理事長声明

昨年12月6日、特定秘密の保護に関する法律が成立した。

同法には、秘密の範囲が広範・不明確に過ぎること、違法秘密等をチェックする第三者機関もなく重要な情報が半永久的に隠ぺいされる危険があること、罰則規定が情報収集活動に対し過度の萎縮効果をもたらすこと、特定秘密を扱う国家公務員のみならず業務委託を受けて特定秘密を提供された業者や研究者など民間人までもが「適性評価制度」による調査の対象となりプライバシー侵害や思想信条による差別の危険性にさらされるおそれがあること、行政権による特定秘密の独占が国民の知る権利にもとづく主権者国民自身による政治の実現という国民主権原理を歪めるおそれが大きいこと、秘密漏えい等の罰則違反として起訴された場合の刑事裁判において特定秘密の内容が被告人や弁護人に対して明らかにされなければ、訴訟上の防御を十分に行うことができず裁判を受ける権利を侵害するおそれがあること等の問題点がある。

当連合会は、2012(平成24)年10月29日「秘密保全法案の国会上程に反対する理事長声明」を発して同法案の問題点を指摘し、同法案の国会上程に反対してきた。昨年9月に「特定秘密保護法案」の概要がパブリックコメントに付された後は、日本弁護士連合会が同年9月12日に同法案に強く反対する旨の意見書を提出し、その後、当連合会を構成する各単位弁護士会においても、各地で法案反対の会長声明を発出し、さらに街頭宣伝やシンポジウム等を実施する等して、反対の声を上げた。

同法に対しては、日本弁護士連合会と全国52単位弁護士会の全てが法案に反対した。加えて、政府が短期間に実施したパブリックコメントでは8割の国民が反対ないし慎重な意見を述べ、福島市で開催された公聴会においては公述人全員が反対、懸念を表明し、世論調査では過半数の国民が反対、8割以上が慎重審議を求め、さらに、国連人権高等弁務官と国連特別報告者が極めて異例にも法案の内容に強い懸念を表明し拙速審議をしないよう求め、多くの国際的な人権NGOも具体的な問題点を指摘して懸念を表明するなど、国内外の反対の声は空前の広がりを見せた。

また、日本弁護士連合会は、昨年11月15日「特定秘密保護法案に反対し、ツワネ原則に則して秘密保全法制の在り方を全面的に再検討することを求める会長声明」を発して、法案の根本的な見直しを求めた。これは、自由権規約19条等をふまえ、国家安全保障分野において立法を行う者に対して、国家安全保障への脅威から人々を保護するための合理的な措置を講じることと、政府の情報への市民によるアクセス権の保障を両立するために、実務的ガイドラインとして昨年6月に作成された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(いわゆるツワネ原則)の成果が同法案の審議に反映していないことから、同原則に即して同法案の問題点を指摘した上で、法案の根本的な見直しを求めたものであった。

ところが、政府・与党は同法の持つ様々な問題点を見直すことも、反対意見に真摯に向き合うこともなく、衆参両議院において採決を強行した。しかしながら、同法には、特に、「わが国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」があると行政機関が判断すれば、国会へも、特定秘密が提供されないことにより、国会の最高機関性が侵害される点(10条1項1号)など、現在政府が検討している国会法の改正による国会内への第三者機関の設置だけでは解決しない本質的な欠陥が多数存在する。

また、問題点を十分に検討しないまま短時間の審議で採決した手法は、極めて強権的かつ非民主的であり、これではおよそ重要法案の審議とはいえず、国会の存在意義を自ら否定するに等しい。

以上の点から、同法は、内容面においても手続面においても憲法の基本原則を踏みにじるものであり、当連合会は到底これを容認できない。

よって、当連合会は、政府・与党に対し、本法を施行することなく廃止するよう求める。併せて、当連合会は、国民の知る権利、プライバシー権、裁判を受ける権利など基本的人権が侵害されることのないよう、行政権による恣意的な情報隠ぺいを許さない制度の確立、および、国民主権にとって必要不可欠な情報公開制度・公文書管理制度の充実化に向け、これからも全力で取り組むことを誓うものである。

2014年(平成26年)3月18日

九州弁護士会連合会
理事長 住 田 定 夫

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