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第8回法曹養成制度検討会議に関する声明

平成25年1月30日に第8回法曹養成制度検討会議が開催され、「継続教育について」「法曹養成全体総論(2)」をテーマとして検討が予定されている。当連合会は、法曹養成制度検討会議に対し、同テーマの検討にあたり、次の点を考慮するよう求める。なお、この声明の発出にあたっては、本年9月に当連合会に所属する各単位弁護士会で実施したアンケート調査の結果を考慮したものであり、アンケート実施状況及び各単位弁護士会のアンケート回収状況は当連合会が発出した平成24年11月18日付「第4回法曹養成制度検討会議に関する声明」末尾に添付しているとおりである。

給費制の復活について

司法修習生は、司法試験合格後に法曹資格を取得するためには、1年間の司法修習を受けなければならない。新60期以降の新司法修習は民事裁判、刑事裁判、検察、弁護という法曹の各分野における8ヶ月間の実務修習と2ヶ月間の選択修習及び2ヶ月間の集合修習の課程で構成されているが、この司法修習は司法修習生に対して司法を担う法曹としての高い専門性を習得させるために国家の施策として、国家の責任において行っているものである。
そのため、司法修習生は修習期間中は修習に専念する義務を負い(裁判所法第67条第2項)、兼業・兼職は禁止されているため、収入を得ることはできない(司法修習生に関する規則第2条)。他方で、修習専念義務を負うことに対する経済的保障として、新64期及び現行65期までの司法修習生に対しては、修習期間中の生活費等の必要な費用は国費から支給されてきた(以下「給費制」という。)。

ところが、裁判所法等の改正により、新65期司法修習生からは給費制が廃止され、司法修習費用を貸与する制度に移行した(裁判所法第67条の2。以下「貸与制」という。)。これにより、本給のみならず交通費や住宅手当等の諸手当も支給されないこととなり、新65期以降の司法修習生は、修習期間中に必要な生活費等をすべて負担せざるを得なくなっている。
日本弁護士連合会が新65期司法修習生を対象に行ったアンケート調査の結果(第3回検討会議・日弁連提出資料)によると、1年間の司法修習期間中に生活費等として支出した平均額は、住居費負担のない人で165万6000円(月額13万8000円)、住居費負担がある人では258万9600円(月額21万5800円)となっている。諸手当が支給されなくなってきたことで、修習配属地に住居を有する修習生と有しない修習生の間で経済的負担に差が生じるという不平等も生じている。

ところで、新司法試験に合格した司法修習生のうち相当数の人は、大学又は法科大学院における多額の学費及び生活費等の負担にあてるために奨学金等による負債を抱えている。
平成23年5月に法曹の養成に関するフォーラムが、新60期から新64期までの司法試験合格者を対象に行った調査によると、回答者(発送数8649・回収数2238・回収率25.9%)のうち、大学または法科大学院のいずれかで奨学金を利用したことがある人の割合は48.3%、そのうち法科大学院でのみ利用した人の割合は30.1%であるが、調査時点における回答者の残債務額の平均値は347万2178円に達しており、1000万円を超えると回答した人もいる(第3回検討会議・資料22・P81参照)。

新65期以降の多くの司法修習生は、司法修習に入る段階で既に多額の負債を抱えているにもかかわらず、給費制が廃止されたことにより、司法修習を受けて法曹資格を取得しようとすると、さらに数百万円の負債を抱えることを余儀なくされるという事態に陥っているのである。

このような状況において、上記日弁連アンケート調査の結果によると、給付制による給付を受けることができなくなった新65期司法修習生で回答をした人(717人)の28.2%(202人)が司法修習を辞退することを考えたことがあると回答し、その理由として、74.8%が弁護士の就職難をあげ、86.1%が貸与制をあげている。司法試験に合格していながら、経済的理由により法曹への道をあきらめることを検討した者が3割近くもいるという実態が、給費制の廃止により現に生じているのである。
また、法科大学院における多額の経済的負担に加えて給費制廃止による更なる多額の負担を強いられることになったことが、法科大学院への入学者、特に未修者の急激な減少をもたらす大きな要因ともなっていることは明らかである。

給費制を廃止し貸与制へ移行した裁判所法等の改正には、「我が国の司法を支える法曹の使命の重要性や公共性に鑑み、高度の専門的能力と職業倫理を備えた法曹を養成するために、法曹に多様かつ有為な人材を確保するという観点から、法曹を目指すものの経済的な負担を十分考慮し、経済的事情によって法曹の道を断念する事態を招くことがないようにすること」との附帯決議がつけられているが、まさに給費制の廃止が「経済的事情によって法曹の道を断念する事態」を招いているのであり、給費制の廃止を継続する限り、今後このような事態はさらに悪化していくことは容易に想定できるところである。

当連合会が行った所属会員に対するアンケート調査では、「給費制の復活について」との設問(回答者数732人・回答率35.18%。単位弁護士会別の回答率については第8問回答集計表参照。)に対し、
     賛成    90.44%
     反対     3.42%
     わからない  4.78%
     その他    1.37%
という回答結果であった。
回答をした会員の9割(662人)が給費制の復活について「賛成」との意見を表明しているが、その選択理由としては、「法曹の使命役割を考えると法曹養成における経済的支援として不可欠
が39.01%、「修習専念義務を課す以上当然である
が40.39%、「貸与制への移行は法曹志望者激減の原因となっている」が19.72%であった。

司法制度改革審議会意見書では司法制度改革には予算の確保が不可欠であると指摘され、司法制度改革推進計画においても司法制度改革推進法に定める基本方針を実施するために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずることとするとされた。そして、法科大学院制度の創設、日本司法支援センターの設置と民事法律扶助制度の拡充、裁判員裁判制度や被疑者国選制度の実施拡充などの施策が行われ、それぞれに予算措置が講じられてきた。
しかし、司法改革以前より、日本の国家予算に占める司法関連予算の割合は国際的に比較すると極めて低く、1%に満たないものであったが、司法改革以後はむしろ更に割合は低下し、0.4%前後で推移している。司法関連予算額自体も、平成18年度の3331億円から毎年減額され、平成23年度は3200億円、平成24年度は3147億円となっているのである。
このうち、司法修習生に対する給与や諸手当である「司法修習手当等
は平成23年度が72億4000万円(対前年度比▲4億円)であったものが、貸与制移行後の平成24年度は2億8000万円(対前年度比▲69億6000万円)となり、修習資金貸与金として60億2000万円が計上されている。
防衛大学校、海上保安大学校、税務大学校など、国家の役割を担うことになる人材を養成する研修については、国家の責務として給費制が採用されており、医師の研修に関しても研修機関が支給する給与に対する補助金が支出されている。防衛大学校の場合、1学年480人の学生に対する手当の予算は約28億円である。
給費制の廃止は、司法関連予算という枠組みの中で司法改革を実施したことによるしわ寄せにすぎない。

司法修習は国家基盤である司法の担い手の養成として国家が戦略的に取り組むべき課題であり、決して所管庁の予算の枠組みにとらわれるようなことがあってはならない。

検討会議では、平成24年7月27日に成立した裁判所法及び法科大学院の教育と司法試験等の連携に関する法律の一部を改正する法律において「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の位置付けを踏まえつつ、検討が行われるべき」とされたことを受けて同会議が設置されたという経緯を重く受け止め、司法修習生に対する給費制を復活すること及び給費を受けていない第65期及び第66期司法修習生に対する遡及的措置を採ることを検討すべきである。

2013年(平成25年)1月18日

九州弁護士会連合会
理事長 山 下 俊 夫

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