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水俣病の認定義務付け訴訟最高裁判所判決に関する理事長声明

本年4月16日、最高裁判所第三小法廷は水俣病未認定患者が水俣病の認定義務付けを求めた訴訟について、水俣病として認定すべきであることを認める判決を言い渡した。

この判決は、1977年(昭和52年)に「後天性水俣病の判断条件」として公表された判断条件、いわゆる「昭和52年判断条件」に定める症候の組合せ(感覚障害に加え、運動障害、平衡機能障害、求心性視野狭窄など)が認められる場合はもちろんのこと、そのような組合せが認められない場合についても、水俣病と認定する余地があるとの判断を示した。すなわち、この判決は、水俣病患者を、公害健康被害の補償等に関する法律によって広く救済することを認めたものであり、これまでの国の水俣病認定のあり方に根本的な疑問をつきつけるものである。

「昭和52年判断条件」については、水俣病関西訴訟最高裁判決[2004年(平成16年)]をはじめとする国家賠償請求訴訟によって、実質的に否定されたと考えられていた。ところが、国は、かかる判決後も水俣病の認定基準を変更しなかったことから、本訴訟では正面から行政認定の在り方が争われ、今回の判決に至った。国は、長年にわたり狭きに失する認定基準を維持し続け、多くの水俣病患者を切り捨ててきたことになるが、この責任は極めて重大である。

当連合会は、2007年(平成19年)2月にチッソ株式会社、国、熊本県、鹿児島県に対して警告を発したが、その中ですべての水俣病患者を救済するための新たな基準を定立することを求めていた。今回の判決は当連合会の意見に合致するものであり、妥当な判決である。

今回の最高裁判決を踏まえ、国は、すべての水俣病患者を救済するために、「昭和52年判断条件」を速やかに見直し、感覚障害などの一症状だけであっても、汚染地区の魚介類の摂取などメチル水銀への曝露歴がある限りは、水俣病患者として認定すべきである。

そして、国は、これまで長年にわたり厳格な認定基準を前提として多くの水俣病患者を不当に切り捨ててきたことを真摯に反省し、水俣病問題の全面的解決のために最大限の努力を尽くす必要がある。また、熊本県及び鹿児島県は、国と協力して認定審査会にて適切かつ迅速な判断ができるように体制を整え、今回の判決に従った水俣病患者の救済に尽力すべきである。

当連合会は、先の警告のほか、2007年(平成19年)10月26日「水俣病問題についての抜本的な解決を求める決議」、2008年(平成20年)10月24日「水俣病問題についての抜本的な解決を求める再度の決議」を採択するなど、水俣病問題の抜本的な解決を求めて活動してきた。公式発見から実に57年もの月日が経過しようとしている水俣病問題は、患者の生命・健康を侵害した重大かつ未曾有の人権問題である。よって当連合会は、今後も引き続き全力を尽くす所存である。

2013年(平成25年)5月1日

九州弁護士会連合会
理事長 住田定夫

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