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大飯原子力発電所の再稼働に関する理事長声明

平成24年6月16日,政府は,関西電力大飯原子力発電所3,4号機の再稼働を行なう決定をした。報道によると、関西電力は同発電所を7月1日より、再稼働させる予定ということである。

2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故は,原子力発電所における事故による被害が広範囲の地域の人々に長期間に渡って深刻な影響を及ぼす極めて重大な人権侵害であることを示し,また,万が一にも事故を起こしてはならない原子炉施設について,それまで「安全神話」によって必要十分なものと考えられていた安全設計審査指針や耐震設計審査指針等に不備があったことを端的に表すこととなった。

従って仮に,現在停止中の原子力発電所を再稼働するとしても,深刻な原子力発電所事故被害の再発を未然に防止し、福島の悲劇を二度と繰り返さないためには,福島第一原子力発電所事故の原因を解明し,その事故原因を踏まえて,不備が明らかとなった旧安全指針等の抜本的見直しを行ない,科学的根拠に基づき確実に安全性が保証される新しい安全審査指針等の策定が何よりも必要不可欠である。その上で,かかる新しい安全基準にのっとった厳密かつ慎重な審査によって再稼働の可否が判断されるべきである。

この観点から、当連合会は,2011(平成23)年7月26日に発表した当連合会理事長声明において、九州電力玄海原子力発電所2号機及び3号機の再稼働について、玄海町長及び佐賀県知事に対して、その再稼働の同意について慎重に判断するよう求めるとともに、国及び九州電力に対して、影響を受けると思われる周辺自治体及び住民の理解を得るための手続を適切に行うことを求めた。さらに原発に依存するわが国のエネルギー政策を抜本的に見直す必要があることから,同年10月28日の九弁連大会において,原子力発電からの撤退と再生エネルギーの推進を求める決議をした。

しかし,事故発生から1年4ヶ月以上が経過した現時点においても,福島第一原子力発電所の事故原因は依然として不明なままであり,また,事故原因を踏まえた安全審査指針等の改定もされていない。

政府は,暫定的な安全基準をもって再稼働を決定したが,その評価項目は,ストレステスト(耐性評価)のそれと重複している反面,対策に時間がかかる共通原因故障やシビアアクシデント対策は含まれておらず,事故原因を踏まえた新たな安全基準とは到底いえないものである。加えて、原発立地自治体以外の周辺自治体及び住民の理解を得るための適切な手続きを取ったとも評価できない。

当連合会管内には,九州電力玄海原子力発電所及び川内原子力発電所という二箇所の原子力発電所を抱え,ひとたび事故が起きれば,周辺地域はもとより九州全域も越えて広く被害が及ぶおそれがある。

周辺自治体・住民に対して理解を得るための適切な手続きを経ず、かつ、適切な科学的根拠が示されない暫定的な安全基準での大飯原子力発電所の拙速な再稼働は,上記九州電力玄海原子力発電所及び川内原子力発電所を含む日本全国の原子力発電所の拙速な再稼働をも許容することになるのであり,当連合会として到底容認できない。これは決して、大飯原発あるいは関西電力固有の問題ではない。

以上のような理由から,当連合会は,政府に対し,大飯原子力発電所3,4号機の再稼働について,拙速な再稼働判断を撤回するよう強く求めるものである。

2012(平成24)年6月29日

九州弁護士会連合会
理事長 山 下 俊 夫

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