死刑執行に強く抗議し、死刑執行を停止し、死刑制度について全社会的議論を求める理事長声明
2015年(平成27年)12月18日、東京拘置所において1名、仙台拘置所において1名の死刑が執行された。2012年(平成24年)12月に自民党政権となってから8度目で合計14名となる。今年10月7日に法務大臣に就任した岩城光英法相が就任後僅か2ヶ月余りで執行を命令したものであり、裁判員裁判により市民が死刑と判断した死刑囚の初の刑の執行であった。
しかしながら、死刑制度は、死刑が人間の生命を奪うという非人道的行為であること、EUを中心とする世界の約3分の2の国々が死刑を廃止又は停止していること、誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなどの様々な問題を内包している。また、2014年(平成26年)11月の内閣府世論調査において、仮釈放のない終身刑導入を条件に「死刑を廃止する方がよい」との回答が37.7%に達するなど、日本国内においても死刑廃止に向けた国民的世論が形成されつつある。さらに、2014年(平成26年)2月には、裁判員経験者から、法務省に宛てて死刑執行停止の要望書が提出されるに至っているのであり、死刑制度の存廃について国民に十分な情報を開示して国民的議論を尽くす必要があることは明らかな状況となっている。
日本弁護士連合会は、2004年(平成16年)の第47回人権擁護大会において「死刑執行停止を求める」決議を行い、2011年(平成23年)の第54回人権擁護大会において「死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける」宣言を行い、また、2015年(平成27年)12月9日、岩城光英法相に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑冤罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度に関する情報を広く国民に開示して死刑制度のあり方についての議論を尽くすべきこと、そして、その議論が尽くされるまでの間はすべての死刑の執行を停止すべきことを求めてきた。
当連合会もまた日本弁護士連合会の決議・宣言及び岩城光英法相に対する要請に賛同するものであり、本件死刑執行について強く抗議の意思を表明するとともに、すべての死刑の執行を停止し、死刑制度についての全社会的議論が尽くされることを強く求めるものである。
2015年(平成27年)12月21日
九州弁護士会連合会
理事長 前田 和馬