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憲法違反の安保法制法案の参議院における採決強行に抗議する
理事長声明

本日、参議院本会議における採決の強行により、平和安全法制整備法及び国際平和支援法(以下、あわせて「安保法制法」という)が成立した。安保法制法が憲法違反であることは、当連合会をはじめ、日本弁護士連合会、全国の弁護士会及び弁護士会連合会が繰り返し指摘してきただけでなく、多数の憲法学者、元長官を含む元最高裁判所裁判官や歴代の元内閣法制局長官も明言しているところである。

国民に対する説明義務を果たさずして、衆議院に続き参議院で採決を強行して同法を成立させたことは暴挙と言わざるをえず、当連合会は断固として抗議する。

日本国憲法は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにする」(憲法前文)ため、前文で平和的生存権を定め、第9条では戦争放棄、戦力不保持、及び交戦権否認を定めるなど徹底した恒久平和主義を基本原理としている。また、政府は、こうした日本国憲法の下、長年にわたり、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」である集団的自衛権について、これを行使することは憲法第9条に違反し、禁じられているとの解釈を堅持してきた。

そこで、現政権は、集団的自衛権行使容認のため、憲法第9条を改正しようとし、また、これに先行して改正手続要件規定である憲法第96条を改正しようとしたが、これらについて国民の総意が得られず改正困難であるとみるや、今度は、従来の政府の憲法解釈を変更しつつ、閣議決定により集団的自衛権の行使を容認するという手法により憲法改正手続を経ずして同様の結果を得るという政治手法に出たのである。憲法改正手続の厳格な要件の意義を無意味にするこうした現政権の姿勢は、立憲主義を破壊する。

安保法制法は集団的自衛権の行使を容認するうえ、戦闘中である米軍等への「後方支援」として、自衛隊を海外のあらゆる地域へ、しかも「現に戦闘行為が行われている場所」以外とはいえ戦闘地域まで派遣し、弾薬等の物品を米軍等に提供することを可能とするものである。それは戦争協力そのものであり、相手国からの武力攻撃を受け、武力紛争へと発展するリスクを伴う。現場の自衛官は、自己保存以外にも武器を使用して人を殺傷し、みずからも殺傷される事態に置かれる。「武力の行使」を禁じ、交戦権を否認している日本国憲法の下で、武力紛争下での人の殺傷を正当化する法的根拠も曖昧なまま、他国の軍隊の武力の行使に協力することは、憲法9条に反し、とうてい許されないものである。

今回成立した安保法制法は、内容自体はもとより、その成立過程について多くの問題を抱えるものであり、当連合会としては、今後も国民とともに、憲法に違反する安保法制法の速やかな廃止を求め続けていくとともに、その廃止以前の時点においても安保法制の規定する条項が発動されることがないよう、引き続き全力を尽くしていくものである。

2015年(平成27年)9月19日

九州弁護士会連合会
理事長 前田和馬

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