大村入管センターのみを視察対象とする視察委員会の設置等を求める理事長声明
2009年(平成21年)に改正された出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)では,第61条の7の2以下で入国者収容所等視察委員会(以下「委員会」という。)の規定を定めている。委員会は,入国者収容所及び収容場並びに出国待機施設の適正な運営に資するために,視察等を行い,意見を述べる第三者機関として活動している。委員会は,出入国管理及び難民認定法施行規則(以下「入管規則」という。)第59条の3,別表第6により,東日本と西日本にそれぞれ1つずつ設置され,長崎県大村市に所在の入国者収容所大村入国管理センター(以下「大村入管センター」という。)をはじめとする西日本の施設は,西日本地区入国者収容所等視察委員会の視察対象とされている。
ところで,法務省所管の収容施設に関する第三者機関としての視察委員会としては,刑事施設や少年院,鑑別所にも存在している。これらの施設については,地域ごとに設置されるのではなく,それぞれの施設ごとに設置されて,より各施設に密着した活発な活動がなされている。
これに対し,委員会は全国で2つしか設置されていないところ,西日本地区入国者収容所等視察委員会の視察対象は,東は名古屋入国管理局から,西は大村入管センターに至るまで広範にわたっている。しかも,対象地域唯一の入国者収容所である大村入管センターは,西端に位置している。これでは,収容者に対して時機に応じて適切な回数の面接等をするにも支障を来すおそれがある。
当連合会が2018年(平成30年)6月21日に大村入国管理センター等の長期収容者について仮放免等収容代替措置の活用による速やかな解放等を求める理事長声明を発したとおり,長期収容等をはじめとする種々の問題に関し,国際法上,人権上の問題が生じかねない状況となっている。にもかかわらず,大村入管センターについて西日本地区入国者収容所等視察委員会の視察の対象としたままとすれば,第三者機関としての委員会の視察が十分に行うことができないおそれも生じうるところである。
そこで,大村入管センターについて,随時適切に視察等を行い,意見を述べることができるようにするために,入管規則を改正するなどして,多くの被収容者が存在する大村入管センターだけを視察対象とする委員会を設置するべきである。仮に,複数の施設を視察対象とするとしても,福岡入国管理局(支局を含む)の収容場や福岡空港・博多港の出国待機施設などといった九州内の施設のみを視察対象とし,大村入管センターを主たる視察対象とする委員会を設置すべきである。また,その際には,既存の委員会同様に,入管法に精通し,入国者収容所等の運営の改善向上に熱意を有する弁護士委員を任命するべきである。
当連合会も,適切な委員会運営のために,日本弁護士連合会と協力して,当連合会管内の弁護士を視察委員として推薦するなどするとともに,今後も大村入管センターをはじめとする入管の問題に関し,大いに関心を払い取り組んでいく所存である。
2019年(平成31)年2月27日
九州弁護士会連合会理事長 市 丸 信 敏