死刑執行に強く抗議し、死刑執行停止を求める理事長声明
2018年(平成30年)7月26日,オウム事件死刑確定者13名のうち,本年7月6日に死刑が執行されなかった6名全員に対して死刑が執行された。前回の7名に対する死刑執行と同様の大量執行がわずか20日後に行われたものであり,また,公判で自首が認定されていた者や再審請求中の者に対する執行という法的な問題を残したままの執行であったことは,極めて遺憾であり,これに強く抗議する。
当連合会は,本年7月18日,
- 死刑は,人のかけがえのない命を奪う刑罰であり,誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなどの様々な問題を内包していること
- 国連は,様々な場面において,日本を含むすべての死刑存置国に対して死刑廃止に向けての行動と死刑の執行停止を求め続けており,国際的には死刑廃止が大きな流れになっていること
- 日本弁護士連合会が,死刑制度が抱える様々な問題点を踏まえ,国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであると宣言したこと
などを踏まえ,上記7月6日の死刑執行に関し,抗議の意思を表明するとともに,死刑存廃についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請する理事長声明を出したばかりであった。
人権保障の国際的な広がりとともに,世界で死刑を廃止または停止する国はこの数十年の間に飛躍的に増加してきた。本年8月2日にはローマ・カトリック教会が今後,死刑制度に全面的に反対する方針を明らかにした。折しも,2020年には,我が国においてオリンピック・パラリンピック及び国連犯罪防止刑事司法会議が開催されることが決定しており,今,世界が我が国を注目している。さらに今回の死刑執行について,駐日欧州連合(EU)代表部,EU加盟国の駐日大使,アイスランド,ノルウェー及びスイスの駐日大使が,いかなる状況下での極刑の使用にも強く明白に反対する立場から,日本政府に死刑廃止を視野に入れた執行の停止の導入を呼びかける共同声明を発表している。
当連合会は,改めて,死刑存廃についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請する。
2018年(平成30年)9月14日
九州弁護士会連合会
理事長 市 丸 信 敏