死刑執行停止を求める理事長声明
2018年(平成30年)7月6日,オウム事件死刑確定者13名のうち7名に対して死刑が執行された。この執行は,今年3月中旬に、オウム事件死刑確定者の一部が東京拘置所から全国5カ所の拘置所に移送され,近日中に,死刑が執行されることが予測されていた中の執行であり,また,心神喪失の疑いがある者や再審請求中の者に対する執行という法的な問題を残したままの執行であった。
ところで、当連合会は,本年2月16日,
- 死刑は,人のかけがえのない命を奪う刑罰であり,誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなどの様々な問題を内包していること
- 国連は,様々な場面において,日本を含むすべての死刑存置国に対して死刑廃止に向けての行動と死刑の執行停止を求め続けており,国際的には死刑廃止が大きな流れになっていること
- 日本弁護士連合会が,死刑制度が抱える様々な問題点を踏まえ,国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであると宣言したこと
などを踏まえ,昨年12月19日の東京拘置所における2名に対する死刑執行に関し,抗議の意思を表明するとともに,死刑存廃についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請する理事長声明を出した。
折しも,2020年には,我が国においてオリンピック・パラリンピック及び国連犯罪防止刑事司法会議が開催されることが決定しており,今,世界が我が国を注目している。こうした時期に,世界の多くの国とともに自由民主主義・人権の尊重という価値理念を共有する我が国が,死刑廃止の世界的な潮流に逆行し,7名に対する大量の死刑執行に及んだことは,国際的非難を招き,我が国の国際的な地位を低下させることは必至である。
当連合会は,改めて,死刑存廃についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請する。
2018年(平成30年)7月18日
九州弁護士会連合会
理事長 市 丸 信 敏