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自然災害債務整理ガイドライン(コロナ特則)の改定を求める理事長声明

政府がオブザーバー参加している自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(以下「自然債務整理ガイドライン」という。)研究会は、2020年(令和2年)10月30日に「「自然災害による被災者の債務整理ガイドライン」を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」(以下「コロナ特則」という。)を制定し、自然災害債務整理ガイドラインを新型コロナウイルス感染症に適用した。

コロナ特則は、2020年(令和2年)2月1日までの既往債務と同年10月30日までに新型コロナウイルス感染症関連で発生した債務について、債務者が支払不能等に陥っている場合に、弁護士等の登録支援専門家の支援を受け、債権者の同意による債務の減免等を実現することにより、債務者の生活・事業の再建支援を図ることを目的としており、運用には公的資金があてられている。

コロナ特則については2021年(令和3年)12月末時点で、1617件について登録支援専門家の委嘱がされているが、一部債権者がコロナ特則を尊重しない対応をとるなど、運用面で様々な問題が生じており、債務整理成立件数は73件に留まっている。コロナ特則の円滑な運用には、各債権者の監督官庁による行政指導等が必要不可欠であるが、満足に機能しているとは言い難い状況にある。

さらに、コロナ特則が制定された後も新型コロナウイルス感染症は終息せず、第3波、第4波、第5波、第6波とその影響を拡大させ、これに伴う緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返し発出されている。市民や事業者は、このような状況下であっても生活や事業を繋ぐために様々な努力をしているが、これにより多数の新たな債務が発生している。しかし、コロナ特則は2020年(令和2年)10月31日以降に発生した債務を対象としていないので、これら債務についてはコロナ特則によって債務の減免等を受けることが期待できない状況にある。

他に、政府が関与する新型コロナウイルス感染症関連の債務整理の枠組みが存在しないことと相俟って、現状、多くの債務者は、破産ないし民事再生手続き等、裁判所の手続きを利用しない限り、債務の減免を受ける方法での生活・事業の再建等を期待できない状況にある。新型コロナウイルス感染症による影響が、自然災害と同じく、債務者本人の責めに帰さない外的要因によって生じていることに鑑みれば、このような状況は債務者において酷である。

その一方で、コロナ特則による新規委嘱件数がほぼ頭打ちの状況にあり、今なお新型コロナウイルス感染症が終息していない点を踏まえれば、2020年(令和2年)10月31日以降の債務を対象としない現在のコロナ特則が、その受皿として期待された機能を発揮できていないことは明らかである。

よって、当連合会は、自然災害債務整理ガイドライン研究会に対し、コロナ特則について次の2点の改定を求める。

第1に、コロナ特則の目的である、新型コロナウイルス感染症の影響により支払不能等に陥った債務者の生活・事業の再建支援を果たすためには、対象債務の期限を大幅に延長し、2020年(令和2年)10月31日以降に発生した債務についても対象とすべきである。

第2に、コロナ特則の運用の円滑化のために、オブザーバー参加している政府による指導監督責任と、これに対する債権者の協力義務等を明記すべきである。

2022年(令和4年)2月24日

九州弁護士会連合会
理事長 森本 精一