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九州電力玄海原子力発電所の再起動に関する理事長声明

2011年7月26日

九州電力玄海原子力発電所第2号機及び第3号機は、現在その稼働を停止しているが、平成23年6月29日に経済産業大臣が地元に説明に行ったことから、その再開がいつなされるのかについて、全国的な注目が集まっている。

停止中の上記原子炉の再起動には、安全協定により玄海町及び佐賀県の同意が必要であるところ、玄海町長は、同年7月4月、再起動に同意する旨をいったん九州電力に伝達し、佐賀県知事も同意に前向きな姿勢を示していた。この玄海町長の同意は、政府が国内すべての原子力発電所に対して耐性試験(ストレステスト)を実施することを表明したことを受け、7月7日、いったん撤回されたものの、玄海町長及び佐賀県知事が、耐性試験後、再起動について速やかに同意する可能性は否定できない。

ところで、福島第一原子力発電所の事故によって、原子力発電所に事故が発生した場合に被害を受ける地域は、安全協定を締結している自治体及び住民に限られないことが明らかとなった。そのため、再起動に当たっては、安全協定を締結している自治体の同意を得るのみならず、それ以外の周辺自治体及び住民に対し、当該原子力発電所(あるいは原子炉)の安全性及び必要性について、十分な説明をし、その疑問に答えたり、意見を聞いたりして理解を求めるという手続を適切に行うこともまた必要である。しかし現在、例えば隣県の長崎県議会で「国と佐賀県、九電に対し、運転再開前に安全確保策などを説明するよう求める緊急決議案が全会一致で可決」されたことからも明らかなように、長崎県や福岡県などの周辺自治体及び住民にその理解を得るための手続が適切にとられているとは言い難い状況にある。

しかも、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故については、その解決に向けた手法も明確になっていないばかりか、未だ事故の明確な原因や経過についても解明されていない。加えて、同事故を理由として、原子力安全委員会は、同年6月16日、原子力発電所の安全設計審査指針や耐震設計審査指針並びに防災指針の見直しに取り組む旨表明し、現在その検討がなされている状況である。従って、福島第一原子力発電所の事故発生に伴い顕在化した原子力発電所の安全性の問題は、現在のところまったく解決されていない状況であり、現時点では、原子力発電所の安全性が十分に確認されているとは言いがたい。

かかる状況下であるから、玄海町長及び佐賀県知事が、「安全性の確認」について、最新の知見に基づく厳密かつ慎重な判断をなさないのであれば、それは適切な対応とは言い難い。また、国及び九州電力が、安全協定を締結している玄海町及び佐賀県の同意を得ることに時間を費やし、事故が起きた時に影響を受ける可能性のある周辺自治体及び住民に対して、安全性及び必要性について理解を求める手続をないがしろにしている点は、不適切であると言わざるを得ない。

以上のような理由から、当連合会は、九州電力玄海原子力発電所2号機及び3号機の再起動について、玄海町長及び佐賀県知事に対して、その再起動の同意について慎重に判断するよう求めるとともに、国及び九州電力に対して、影響を受けると思われる周辺自治体及び住民の理解を得るための手続を適切に行うことを求める。

2011(平成23年)年7月26日

九州弁護士会連合会
理事長 野口敏夫