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国立ハンセン病療養所の将来構想に関する理事長声明

現在,全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)を中心として,国立ハンセン病療養所の将来構想に関し,療養所が地域に開かれ,広く市民が利用できる施設を併設できるようにすることなどを目的として,ハンセン病基本法を制定する取り組みが行われている。

国は,絶対隔離政策を違憲とした熊本地裁判決を受け,2001年(平成13年)12月25日,ハンセン病問題対策協議会において,「13の国立ハンセン病療養所入所者が在園を希望する場合には,その意思に反して退所,転園させることなく,終生の在園を保障するとともに,社会の中で生活するのと遜色のない水準を確保するため,入所者の生活環境及び医療の整備を行うよう最大限努める」ことを確認した。

当連合会は,1995年(平成7年)9月にハンセン病療養所入所者からの手紙を受けて調査を行い,1996年(平成8年)3月,国に対しハンセン病問題の抜本的解決を求める理事長声明を発表した。そして,療養所内での無料法律相談会を実施するなど,入所者の生活支援にも取り組んできた。2001年(平成13年)5月には,熊本地裁判決を受け,国に対し在園保障を含め,ハンセン病問題を解決するための抜本的な施策を求める理事長声明を発表した。

熊本地裁判決後も入所者の減少と高齢化は進み,2007年(平成19年)5月現在,入所者数は2890名,平均年齢は78.9歳となっているところ,医療や看護の人員は削減され,療養所の医療機能の低下が指摘されている。また,療養所は,隔離政策のため地域社会から隔絶された場所に設置されているものが多く,近い将来,少数の入所者が地域社会から孤立して生活することや,違法な政策で故郷を追われた入所者が,統廃合によりさらに生活場所を追われることが懸念されている。

このような状況において,療養所の生活を希望する入所者に対し,権利としての終生在園を真に保障するためには,療養所の将来のあり方を見直し,多目的な施設とすることを可能にするなど,療養所を地域社会に開かれたものにすることが必要不可欠である。

当連合会は,国に対し,ハンセン病の患者であった人々の高齢化を十分に踏まえ,療養所の将来構想に関する全療協の要請を最大限尊重し,ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を図ることを内容とする「ハンセン病問題基本法」を制定するよう強く求めるものである。

また,当連合会は,今後とも一層ハンセン病であった人々の人権が確実に回復されるための取り組みが必要であり,管内に国立ハンセン病療養所5ヵ所を擁する当連合会が果たすべき役割が極めて重大であることを銘記し,今後とも関係機関と協同して,ハンセン病問題の全面的解決のために取り組んでいく決意である。

2008年(平成20年)1月28日

九州弁護士会連合会
理事長 田中 寛