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「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に抗議し、同法の廃止を求める理事長声明

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「カジノ解禁推進法」という。)が、2016年12月15日、成立した。

当連合会は、2015年2月に発出した理事長声明で、民間事業者のカジノ施設を認めるカジノ解禁推進法案は、法が刑罰をもって賭博行為を禁圧する我が国の法体系に正面から対立するものであって、カジノ解禁により、ギャンブル依存症の深刻化、多重債務問題の再燃、暴力団対策上の問題、マネー・ロンダリングの危険、青少年や児童らの健全育成への悪影響などの弊害が強く懸念されるとして同法案の提出に強く反対した。

そして、当連合会は、2016年9月に宮崎市で開催した定期大会において、「ギャンブル依存症のない社会をめざす宣言」を全会一致で採択し、国に対して、ギャンブル依存症被害の実態把握・調査研究を行い、その結果を国民に公表すること、依存症に苦しむ人に利用しやすい相談窓口を設け治療等に結び付けること、全国民、特に青少年に対し予防教育を行って、依存症は自己責任の問題であるという偏見を除去すること、パチンコ・パチスロ等はギャンブルであることを前提として適切な法整備と広告規制・アクセス制限を行うこと、税収をギャンブルに求める政策を見直し、ギャンブル利用者の拡大促進を止めること、「ギャンブル依存症対策基本法」を制定すること等を求めるとともに、こうした依存症対策が十分にとられていない現状でのカジノ導入は見合わせること、を申し入れた。

カジノ解禁推進法は、当連合会が指摘した弊害に対する施策及びギャンブル依存症対策がなされないまま、カジノ解禁を推進しようとするものであって、カジノ解禁についての問題点は全く払拭されていない。付帯決議において、ギャンブル依存症対策などが盛り込まれたが、同対策は、カジノの導入を待つことなく、現時点においても、直ちに取り組まなければならない重要な課題であって、同付帯決議によってカジノ解禁を許容できるものではない。

カジノ解禁推進法案は、2013年12月に国会に提出されたが、廃案となり、2015年4月に再提出された後放置されてきたところ、2016年11月30日に、突然、審議が始まり、わずか2週間で成立した。新聞各紙はこのような審議に対して批判をしている。

何より世論調査ではカジノ解禁に反対あるいは慎重であるべきとの意見が多数であって、国会が、このような国民の意見に背を向けて、十分な審議を行うことなく、短期間でカジノ解禁という重要な政策転換を行ったことは到底許されない。

よって、当連合会は、カジノ解禁推進法の成立に抗議し、同法の廃止を強く求めるものである。

2016年(平成28年)12月27日

九州弁護士会連合会
理事長 萩 元 重 喜

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