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菊池事件再審請求棄却決定に対する理事長声明

熊本地方裁判所は、2026年(令和8年)1月28日、いわゆる菊池事件に関して、その確定審の審理が憲法に違反することを認めていながら、再審請求を棄却する決定(以下「本決定」という。)をした。

菊池事件は、ハンセン病患者とされた元被告人が、自分の病気を熊本県衛生課に通報した村役場職員を逆恨みして殺害したと疑われた事件である。菊池事件では、菊池恵楓園・菊池医療刑務所内の「特別法廷」が開廷場所として指定され、元被告人が無実を訴えながらも、1953年(昭和28年)8月29日、第一審死刑判決が下され、1962年(昭和37年)9月14日、死刑が執行された。

菊池事件は、えん罪であり、しかも憲法違反の審理によって死刑判決がくだされ、その執行がされたものであって、元被告人に無罪を言い渡すべき証拠もあるとして、元被告人の遺族らによって、再審請求をしていたものである。

菊池事件における開廷場所指定、第一審・控訴審の審理及び態様(予防衣を着用し、証拠物を扱う際に手にゴム手袋をはめる等したこと)は、ハンセン病患者であることを理由とした合理性を欠く差別であって、憲法14条1項(平等原則)に違反するとともに、総体として見ると、ハンセン病に対する偏見・差別に基づき元被告人の人格権を侵害したものとして憲法13条に違反するものである。また、菊池恵楓園は、一般国民の訪問が事実上不可能な場所であり、裁判の公開原則を定めた憲法37条1項、82条1項に違反する。さらに、元被告人が犯行を全面的に否認しているにもかかわらず、第一審の弁護人が公訴事実を争わず、しかも有罪立証のための検察官請求証拠を争わずに全て同意したこと等は、弁護人の誠実義務に違反し、実質的な意味での弁護人選任権を侵害したと評価すべきものである。

しかしながら、菊池事件の確定審の審理に憲法13条,14条1項に違反し、82条1項に違反する疑いがあることを認めながら、再審の開始を認めなかった。本決定は、憲法違反の審理手続及びそれによってなされた誤った判決を是正することをしなかったという点において、憲法を遵守することを放棄し、また、事件本人及び広くハンセン病患者・元患者らの人間回復・人権救済を拒んだものと言わざるをえない。

裁判官は憲法尊重擁護義務を負っているし、司法は法の番人であって、違憲の確定判決を是正することは、裁判所の責務である。にもかかわらず、再審請求を棄却した熊本地方裁判所の本決定に対し、当連合会は強く抗議する。そして、元被告人の名誉が回復されるための支援を続けるとともに、菊池事件で明らかになったとおり、憲法違反が再審開始事由と定められておらず、またえん罪の疑いのある確定判決について執行停止に関する定めもないなどといった再審法制の問題点を踏まえ、当連合会は、日本弁護士連合会とともに、再審法改正に向けた活動をしていくものである。

2026年(令和8年)1月30日

九州弁護士会連合会
理事長 近藤 日出夫

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