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死刑執行に強く抗議し,直ちに死刑執行の停止を求める理事長声明

本年8月2日,東京拘置所と福岡拘置所で各々1名の死刑が執行された。うち1名は再審請求中であった。

死刑は,人のかけがえのない命を奪う刑罰であり,誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなど,様々な問題を内包している。

また,過去の再審無罪判決の存在に鑑みても,再審請求中の執行についてはとりわけ慎重さが求められる。

国連は,1966年に人間の尊厳・生存権を奪われない権利を法的権利とするため国際人権自由権規約(B規約)を採択し,さらには1989年に同規約第二選択議定書(死刑廃止条約)を採択して全世界での死刑廃止を求めた。その後,国連総会決議を通じて,日本を含むすべての死刑存置国に対して死刑廃止を視野に入れた死刑の執行停止を求め続け,国連人権理事会のUPR(普遍的定期的審査)において死刑存置国に対して死刑廃止に向けた行動を求める勧告を重ねている。

このような中,日本弁護士連合会は,2016年10月7日の第59回人権擁護大会において「死刑廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し, 2020年までに死刑廃止を含む刑罰制度改革を目指すべきことを政府に求めている。

当連合会は,これらを踏まえ,死刑執行に対して強く抗議する意思を表明するとともに,死刑存廃についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請する理事長声明を発表してきた。

それにもかかわらず,今般,再審請求中の者も含め,死刑の執行が重ねられたことは,極めて遺憾であり,強く抗議する。

人権意識の国際的高まりとともに,世界で死刑を廃止または停止する国はこの数十年の間に飛躍的に増加し,法律上及び事実上の死刑廃止国は,2018年12月31日現在世界の7割を超えた。同年8月2日にはローマ・カトリック教会が,今後死刑制度に全面的に反対する方針を明らかにし,同年12月17日には,国連総会本会議において,史上最多の支持(121か国)を得て死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議案が可決された。また,死刑制度を残し,現実に死刑を執行している国は,過去10年で18~25か国にすぎず(2018年度は20か国),死刑廃止は世界的な潮流という状況にある。

2020年には,日本においてオリンピック・パラリンピック及び国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が開催されることが決定しており,今,世界が日本を注目している。

当連合会は,2012年から死刑廃止を検討するプロジェクトチーム(死刑廃止検討PT)を設置し,九州全県で連続シンポジウムや勉強会を実施し,弁護士のみならず広く一般市民に向けて死刑制度の存廃について広く議論をする機会を提供し,情報発信を行い続けている。

当連合会は,今回の死刑執行について強い抗議の意思を表明するとともに,改めて,死刑廃止を視野に入れた死刑制度についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を直ちに停止することを強く要請する。

2019年(令和元年)9月26日

九州弁護士会連合会
理事長 宮國 英男

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