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大村入管センターにおけるナイジェリア人死亡事案に関する調査報告書に対する理事長声明

出入国在留管理庁は,2019年(令和元年)10月1日,入国者収容所大村入国管理センター(以下「大村入管」という。)に収容されていたナイジェリア国籍の男性が同年6月24日に死亡した事案(以下「本件」という。)について,調査報告書(以下「調査報告書」という。)を公表した。

調査報告書によると,男性の死因は飢餓死で,大村入管は,同年5月30日には男性が拒食している事実を把握していた。この拒食把握時点の男性の体重は60.45キログラムであったが,医師が最後に診察した同年6月17日時点では約10キログラム,約16%も減少していた。

もっとも,調査報告書は,大村入管の対応について,医師等が連日点滴治療等を勧めたものの,本人が頑なに拒否したこと,常勤医師のいない大村入管における強制的治療は困難であったことなどから,不相当であったと評価することは困難であるとした。また,調査報告書は,ナイジェリアとの間では近年護送官付き送還について交渉中であったため,男性を強制送還することは困難であったとする一方で,2018年(平成30年)2月28日付法務省入国管理局長指示「被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の更なる徹底について(指示)」(以下「本件指示」という。)を根拠に,男性の前科内容等に鑑みれば仮放免を行うべきであったということもできないなどと結論づけた。

しかしながら,2001年(平成13年)11月2日付法務省入国管理局長通達「拒食中の被収容者への対応について(通達)」では,拒食開始から22日目の場合や体重減少が10%を越えた場合等には,速やかに強制的医療を行うことが求められており,これらの場合は極めて危険な状態と理解されている。本件では2019年(令和元年)5月30日の拒食把握時点から起算しても同年6月17日の時点で既に10%以上も体重が減少しており,同月21日には拒食開始から22日目となっていたにもかかわらず,同月17日から死亡日までの1週間,医師による診察や外部医療機関の受診は全く実施されておらず,また,拒食の原因に精神疾患がないかを確かめるための精神科の受診もされていないなど,医療体制に重大な問題があり,あまりにも被収容者の生命権・健康権(憲法13条)を軽んじているといわざるを得ない。

そもそも,出入国管理及び難民認定法による収容は,あくまで強制送還を実効的に行うためのものである。強制送還の予定がない者の身体拘束を続けることは,目的外の拘禁であり,憲法13条や憲法34条が保障する人身の自由を侵害し,市民的及び政治的権利に関する国際規約9条1項が禁止する恣意的拘禁にあたる。本件では,強制送還の実現が困難であった以上,収容を継続すること自体が違法なものであり,ましてや,男性の生命に切迫した危険が迫っていたのであるから,速やかに仮放免を行うべき事案であったといえる。

この点について,調査報告書は,本件で仮放免を許可すると,仮放免許可を得ることを目的とした拒食を誘発するおそれがあるなどと述べている。しかし,近時の入管施設における被収容者の摂食拒否事案の多発自体が,法の趣旨を逸脱した違法な長期収容に対する抗議として行われているものであるから,そもそもこの違法な長期収容こそが解消されなければならない。

当連合会は,2018年(平成30年)6月21日付「大村入国管理センター等の長期収容者について仮放免等収容代替措置の活用による速やかな解放等を求める理事長声明」等を発し,入管施設における長期収容等の問題について警鐘を鳴らしてきた。それにもかかわらず本件が起きてしまったのは,正に外国人収容に関する法律の趣旨を逸脱した誤った運用による弊害が極まったことによるものであり,まずもって出入国在留管理庁及び大村入管に対し,強く抗議する。

また,法務省及び出入国在留管理庁に対し,本件指示を速やかに撤回し,生命をも顧みない外国人収容に関する現在の誤った運用及び不十分な医療体制を抜本的に見直すことを求める。

そのためにも,再度本件について入国者収容所等視察委員会などの第三者機関による徹底的かつ迅速な調査を実施し,その調査結果を公表するとともに,当連合会が発した2019年(平成31年)2月27日付「大村入管センターのみを視察対象とする視察委員会の設置等を求める理事長声明」のとおり,大村入管に新たな視察委員会を設置することを求める。

2019年(令和元年)10月29日

九州弁護士会連合会
理事長 宮國 英男

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