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仙台地方裁判所における旧優生保護法違憲判決を受けての理事長声明

仙台地方裁判所は、2019年5月28日、旧優生保護法に基づく優生手術を受けた原告2人の国家賠償請求訴訟において、旧優生保護法は子を産み、育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)を侵害するものであり、憲法13条に違反するという憲法判断を示した(以下「仙台地裁判決」という。)。

2019年4月に成立した旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給に関する法律(以下「一時金支給法」という。)では、旧優生保護法に基づく優生手術が憲法違反であったことが明記されていない。本判決が旧優生保護法の違憲性を明確に宣言した意義は大きい。

また、一時金支給法では、国の責任が明確に定められておらず、誰によってその被害がもたらされたのか、責任の所在がどこにあるのかが、意図的にあいまいなままにされている。本判決は、結果的には立法不作為について国の裁量を広く認めたことにより賠償責任を否定したとは言え、旧優生保護法の違憲性を明言するとともに、損害賠償請求が除斥期間により請求できなくなることの不利益を考えて、新たな立法措置の必要性を認めている。このように本判決は、旧優生保護法に基づく優生手術に関して、国の法的責任を認めたものと評価できる。

これに対して、一時金支給法は、長期間にわたる人権侵害行為に対して、金320万円の一時金を支給するにとどまる。旧優生保護法に基づき、国が広汎かつ長期間にわたって人権侵害行為を行い、深刻な被害がもたらされたという視点が欠落しており、金額としてもはなはだ不十分である。

本件の被害者は、自ら受けた深刻な被害に対して、国の真摯な反省と謝罪を求めている。この点についても、一時金支給法では「我々は、それぞれの立場において反省しお詫びする」とあるだけであり、「我々」というのが誰を指しているのか、国が謝罪したのかどうかも明確ではなく、あいまいなままにされている。

仙台地裁判決が、除斥期間の経過を理由として、損害賠償請求を棄却したことは、原告らの人権侵害の重大性・現在性を理解しないもので、強い非難に値する。もっとも、優生手術を受けた者は同意がなかった例だけでも1万6000人を超えており、訴訟手続のみによって、優生手術を受けた者ら全体の人権回復を行うことは極めて困難である。旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者ら全体に対して正当な補償を行い、侵害された人権を回復して抜本的な解決を図るためには、一時金支給法の内容をさらに改正して、被害の実態に合った内容に変えていくことこそが重要であり、現在、全国の裁判所で被害を訴えている者の共通の願いでもある。

九州弁護士会連合会は、仙台地裁判決が旧優生保護法について違憲判断を下したことの重みを考えて、政府及び国会に対して、一時金支給法のさらなる改正により、国が行ってきた人権侵害行為について、国に法的責任があることを明記し、被害回復のため被害の実態に見合った正当な補償をするなど、抜本的な見直しを行うことを求める。

また、国会において、憲法違反を明記の上、謝罪決議を行うこと、さらに内閣総理大臣には、国に憲法違反による法的責任があることを明示した上で、被害者に対して真摯な反省と謝罪を行うことを求める。

2019年(令和元年)10月29日

九州弁護士会連合会
理事長 宮國 英男

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