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「松橋事件」特別抗告棄却決定に関する理事長声明

2018年(平成30年)10月10日,最高裁判所は,いわゆる「松橋事件」に関する再審請求事件の特別抗告審において検察官の特別抗告を棄却し,これにより松橋事件の再審開始が確定した。当連合会は,本決定を高く評価するものである。

松橋事件は,1985年(昭和60年)1月6日,被告人が,熊本県下益城郡松橋町(現在の熊本県宇城市)所在の被害者宅において,切出小刀で被害者を殺害したとして,逮捕・起訴された事件である。

被告人は,連日かつ長時間にわたる任意取調べの末,否認から自白に転じ,逮捕・起訴された。被告人と犯行を直接結びつける証拠は自白しかなく,被告人は公判廷で無罪を主張したが,確定審は,被告人の捜査段階における自白の任意性・信用性を認め,懲役13年の有罪判決を言い渡した。その後,控訴及び上告がなされたが,1990年(平成2年)1月26日,有罪判決が確定した。

被告人の服役後,2012年(平成24年)3月12日,熊本地方裁判所に再審請求がなされた。検察官から開示を受けた証拠の中から,凶器とされた切出小刀に巻き付けるために切り取り,犯行後に焼却したと被告人が自白していたシャツ片が発見され,これが重要な新証拠となった。

熊本地方裁判所は,2016年(平成28年)6月30日,弁護人が提出した上記シャツ片などの新証拠の新規性,明白性を認め,被告人の自白の信用性を否定し,再審を開始する決定をしたが,同決定に対して,検察官が即時抗告を申し立てた。福岡高等裁判所は,2017年(平成29年)11月29日,熊本地方裁判所の再審開始決定を維持し,検察官の即時抗告を棄却する決定をしたが,同決定に対し,検察官はさらに特別抗告を申し立てた。

そして,上記の最高裁判所による特別抗告棄却決定により,再審請求から約6年7か月の月日を経て,ようやく再審開始が確定するに至った。

被告人は, 今年85歳の高齢であり,被告人が生きているうちにえん罪であることを明らかにして,救済をなすことが急務である。そのため,当連合会は,検察官に対し,再審公判において有罪立証せずに,速やかに無罪判決が出されるよう対応することを求める。

また,当連合会は,その必要性がより明らかとなった取調べ全過程の可視化,証拠の全面開示等,えん罪を防止するための制度改革の実現を目指して,全力を尽くす決意である。

2018年(平成30年)10月22日

九州弁護士会連合会
理事長 市 丸 信 敏