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最高裁判所に対し日弁連とともに地域司法の基盤整備に関する
協議を速やかに再開するよう求める理事長声明

当連合会は、これまで、支部管内の各地域における司法基盤の制度的問題の改善に取り組んできた。

2009年(平成21年)度からは、定期的に支部交流会を開催し、各地域で活動する弁護士の実情報告を基礎として情報共有し、支部管内における司法基盤の制度的な問題を検討した上で、2013年(平成25年)10月25日、「裁判所支部における司法基盤の整備充実を求める決議」を行った。

同決議は、「市民に身近で利用しやすく頼りになる司法サービスは、いつでも、どこでも、だれにでも、等しく保障されなければならない。裁判所本庁管内の市民に対してはもとより、裁判所支部管内の市民に対してももちろんである」といった理念をもとになされたものである。

その後、日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)は、2014年(平成26年)9月から約1年半にわたり、最高裁判所との間で「民事司法改革・最高裁協議」(以下「最高裁協議」という。)において協議を重ね、2016年(平成28年)1月に3支部(静岡地方裁判所浜松支部、長野地方裁判所松本支部、広島地方裁判所福山支部)における労働審判実施支部の拡大など一定の成果を上げたものの、当連合会管内の支部に関しては、特に改善がなされないまま同協議を終了した。

最高裁協議の実現及び成果の獲得は評価されるべきであるものの、本来、地域司法の基盤整備に関する問題は、継続的な協議のもと、両者の不断の努力によって、日々、改善を重ねていくべきものであって、限られた期間の協議で終わってよいものではない。

現時点で最高裁協議が終了してから7年が経過しているが、その間、民事裁判手続のIT化をはじめとして、司法をとりまく環境は絶えず変化しているのであるから、当該変化に対応して、両者において、協議を継続していくことが重要である。

したがって、最高裁判所において、日弁連との間で、地域司法の基盤整備に関する協議を速やかに再開することが、強く望まれる。

また、下級裁判所の裁判官の員数は、裁判所職員定員法の改正によって毎年定められるところ、判事補の員数は、1951年(昭和26年)から一貫して増加し、2009年(平成21年)には1020名とされていたものの、2010年(平成22年)から2016年(平成28年)まで1000名とされて以降は減少の一途を辿り、2022年(令和4年)は857名となっている。このような裁判所職員定員法の改正の流れから、全体として裁判官の員数を削減していく方向性が見て取れる。

そもそも、2001年(平成13年)6月12日の司法制度改革審議会意見書では、全体としての法曹人口の増加を図る中で、裁判官、検察官を大幅に増員すべきであるとの意見が出されていたところである。

それにもかかわらず、今後、裁判官の員数が増加されるどころか削減されていくと、その後には当然支部の統廃合や、支部機能の集約など、支部の役割が後退していくことが想定され、支部機能の充実という方向性と相反する結果となる。

裁判官の員数の削減に伴う安易な支部の統廃合がなされないよう、注視していくとともに、司法制度改革審議会の改革理念を踏まえた協議がなされるよう求めたい。

ここで、関東弁護士会連合会は、2022年(令和4年)11月25日、「日本弁護士連合会及び最高裁判所に対し、地域司法の基盤整備に関する協議の再開を求める理事長声明」(以下「関弁連声明」という。)を明らかにした。

関弁連声明では、日弁連及び最高裁判所は、下記事項につき、地域司法の基盤整備に関する協議を速やかに再開すべきとされており、ここで求められている最高裁協議の再開については、当連合会としても全面的に賛成する。


(1) 前回の協議で取り残された合議事件取り扱い支部の横浜地裁相模原支部などでの拡大、家庭裁判所調停室不足の解消、待合室の拡大、裁判官の増員などに向けた協議

(2) 労働審判実施支部の拡大に向けた協議

(3) 社会の期待に応える家庭裁判所の充実に向けた協議


なお、前回の最高裁協議では実現しなかったが、同協議では、九州・沖縄管内の福岡地方裁判所久留米支部及び長崎地方裁判所佐世保支部における労働審判の実施などについても検討されている。

九州・沖縄管内も、離島が数多く存在するという地域の特性などから、多くの地域司法の問題を抱えている。

関東弁護士会連合会の声明で言及されている(1)(2)(3)の事項に限らず、上述した裁判官の員数問題を含む幅広い問題、また九州・沖縄管内の問題も含んだ内容について、協議の実現を求めたい。

よって、当連合会は、最高裁判所に対し、日弁連との間で、地域司法の基盤整備に関する協議を速やかに再開するよう求める。

以上


2023年(令和5年)5月17日

九州弁護士会連合会
理事長 笹川 理子