死刑執行に対し強く抗議し、直ちに全ての死刑執行を停止し、死刑制度廃止の実現を求める理事長声明
本年8月21日、大阪拘置所において、1名の死刑が執行された。高市内閣が発足し平口洋法務大臣が就任した後初めての執行である。
死刑は、基本的人権の核をなす生命に対する権利(憲法13条、自由権規約第6条)を国家が一方的に剥奪する制度である。誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかず、2022年6月「懲らしめる刑罰」から「更生と教育を主眼とする刑罰」へ移行された改正刑法の理念とも相容れないなど、様々な問題を内包している。
国連は、1966年に人間の尊厳・生存権を奪われない権利を法的な権利とするため国際人権自由権規約(B規約)を採択し、さらには1989年に同規約第二選択議定書(死刑廃止条約)を採択して全世界での死刑廃止を求めた。その後、国連総会決議を通じて、日本を含むすべての死刑存置国に対して死刑廃止を視野に入れた死刑の執行停止を求め続け、国連人権理事会のUPR(普遍的定期的審査)において死刑存置国に対して死刑廃止に向けた行動を求める勧告を重ねている。こうした中で、過去10年以上死刑を執行していない事実上の廃止を含め145か国(2025年末時点)が既に死刑制度を廃止しており、世界的な死刑廃止の流れが進んでいる。
日本弁護士連合会は、2016年10月、人権擁護大会(福井市)において「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、2022年11月、「死刑制度の廃止に伴う代替刑の制度設計に関する提言」を取りまとめ公表した。
また、2024年2月には学識経験者や警察・検察出身者、被害者団体代表者らより構成される「日本の死刑制度について考える懇話会」が設置され、同年11月には、全委員の一致で「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない」「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること」を提言する報告書が公表された。
それにもかかわらず、同懇話会の提言に真摯に向き合うことなく、今般の死刑が執行されたことは、大変遺憾である。
当連合会は、2012年に死刑廃止について検討するプロジェクトチームを設置し、2020年度から死刑制度廃止検討委員会へ組織を発展拡充し、当連合会や管内の単位弁護士会主催でのシンポジウムや勉強会を実施し、会員のみならず広く市民とともに死刑制度について学びを深め、情報の発信を継続してきた。そして、死刑制度が内包する様々な問題や死刑廃止の流れ等を踏まえ、管内の各単位弁護士会で、死刑制度は廃止すべきであるとの立場を明らかにする総会決議の採択が重ねられてきたところ、2025年10月、当連合会定期総会において、「死刑制度の廃止を求める決議」を採択した。
当連合会は、今般の死刑執行について強い抗議の意思を表明するとともに、直ちに全ての死刑執行を停止し、死刑制度の廃止を実現することを要請する。
2026年(令和8年)9月2日
九州弁護士会連合会
理事長 千野 博之





