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「松橋事件」再審無罪判決に関する理事長声明

本日,熊本地方裁判所は,いわゆる「松橋事件」に関する再審公判において,殺人事件について無罪判決を言い渡した。当連合会は,本日の無罪判決を高く評価するものである。

松橋事件は,1985年(昭和60年)1月6日,宮田浩喜さんが,熊本県下益城郡松橋町(現在の熊本県宇城市)所在の被害者宅において,切出小刀で被害者を殺害したとして,逮捕・起訴された事件である。

宮田さんは,連日かつ長時間にわたる任意取調べの末,否認から自白に転じ,逮捕・起訴された。宮田さんと犯行を直接結びつける証拠は自白しかなく,宮田さんは公判廷で無罪を主張したが,確定審は,宮田さんの捜査段階における自白の任意性・信用性を認め,懲役13年の有罪判決を言い渡した。その後,控訴及び上告がなされたが,1990年(平成2年)1月26日,有罪判決が確定した。

宮田さんの服役後,2012年(平成24年)3月12日,熊本地方裁判所に再審請求がなされた。再審請求前に検察官から開示を受けた証拠の中から,凶器とされた切出小刀に巻き付けるために切り取り,犯行後に焼却したと宮田さんが自白していたシャツ片が発見されており,これが重要な新証拠となった。

熊本地方裁判所は,2016年(平成28年)6月30日,弁護人が提出した上記シャツ片などの新証拠の新規性,明白性を認め,宮田さんの自白の信用性を否定し,再審を開始する決定をした。検察官は即時抗告を申し立てたが,福岡高等裁判所は,2017年(平成29年)11月29日,熊本地方裁判所の再審開始決定を維持し,検察官の即時抗告を棄却する決定をした。検察官はさらに特別抗告を申し立てたが,昨年10月10日,最高裁判所は検察官の特別抗告を棄却し,再審請求から約6年7か月の月日を経て,再審開始が確定するに至った。

そして,本年2月8日,第1回の再審公判が開かれ,熊本地方裁判所は,宮田さんの自白調書や凶器とされた切出小刀について検察官の証拠調べ請求を却下し,宮田さんと殺人事件を結び付ける証拠が何一つない状態で論告,弁論が行われ,即日結審した。その結果,本日,再審公判において無罪判決が言い渡され,事件発生から実に34年を経て,ついに宮田さんのえん罪が明らかにされた。

宮田さんは, 現在85歳の高齢であり,宮田さんの生あるうちにえん罪であることを確定させ,救済をなすことが急務である。そのため,当連合会は,検察官に対し,無罪判決に対する上訴権を放棄するよう強く求める。

また,当連合会は,その必要性がより明らかとなった取調べ全過程の可視化,証拠の全面開示等,えん罪を防止するための制度改革の実現及び再審法制の改善・改正を目指して,全力を尽くす決意である。

2019年(平成31)年3月28日

九州弁護士会連合会
理事長 市 丸 信 敏